2学期の始まりの日。
私は今、千代瀬高校2年B組の教室の前にいる。
下剋上に失敗した私は転校を決意し、両親に全てを話し相談したところ、名前は変えるべきだと言われたから、"桃香"から桃の花で3月を連想して"弥生"にして、苗字はお母さんの旧姓を使った。
今日から静かに過ごすんだ。
そう転校の時に私は心に決めていた。
先生に呼ばれ、私は教室へ足を入れた。
教室へ入ると男子からの黄色い歓声が聞こえる。
その歓声に私の心は澄み渡るような気分だった。
黒板に名前を書いたとき、生徒の1人が…
そんなことを先生が生徒達と話している間、教室内の様子を私は伺っていた。
後ろを向いて、話している派手な男女6人組。
女子の目が集まり、顔が整っている男子2人組。
窓際1番後ろの席で窓の外を眺める目付きがあまり良くない金髪の女子。
あそこら辺が主な勢力みたいだし、1軍かな…。
下剋上をしたせいか、いつの間にか、私は身の回りの状況把握が上手くなっていた。
勢いよく開けられた教室のドア。
そこに立っていたのは柚稀だった。
どうして……
左目を隠す前髪を触りながら、明るい笑顔で自己紹介をした柚稀。その自己紹介にクラスからは笑いが起きていた。
てか、目に傷があったからだったんだ…
前の学校でズボンだった柚稀が見慣れすぎて、制服のスカートとタイツを履く姿は新鮮味がある。
先生にみんなが返事をする。
部活はみんなが気になることだろう。
正直、どれでもいいけど。
どうせならと思い、私は…
授業中に琉依に褒められたことがあった私はそうすることにした。
運動部なら、私の地位も少しは上になるだろう。
1人はさっきの派手系の男女6人組の中から。
1人は中央の3人程のグループから手を挙げた。
そう柚稀が言いかけたところで…
私は小さく呟く。
手を挙げたのはさっきの男子2人組の内の1人。
名前は……燎颯斗君だっけ?
その一言に女子がザワついた。
燎君と喋ってた男子は呆れた表情を浮かべる。
"柚稀と再会"という言葉に更に女子がザワつく。
あの2人は女子の人気者ってこと…。
それなら、転校生を下の名前で呼んだり、久しぶりの再会とかは騒ぐに決まってる。
そう言い、先生は私と柚稀の席を教えると教室からいなくなった。
夏休みの間に教科書の用意は出来たので、授業は問題なく受けることが出来た。
そして、運命の昼休みがやってきた…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!