夕方になり、窓の外がオレンジ色に染まる。
私は本を片付けると、教室に向かった。
数人の女子の声。勿論、聞き覚えがある。
スマホで録画を始め、教室の前からカメラを少し覗かせる。
中にいたのは、沙月、雪奈、綾。どうやら、めぐみは部活で不在のよう。あとは私の予想通り、有咲。
有咲の発言に少し困惑の表情を浮かべた綾。
確かに麗美は人に嫌われたくなくて誰にでも優しくしようとしている。だけど、悪口とかを言っているのは私は見たことない。
沙月がニヤッと笑うように有咲に聞く。
すると、有咲はスグに…
雪奈が私の名前を出した。
いないと思って言いたい放題してくれるね…
笑いながら話す有咲。
有咲の言葉に雪奈はお腹を押さえて笑う。
笑う有咲と雪奈に比べ、私の顔は真っ青に。
蔑むような目、脳内に響く甲高い笑い声。
汚くなった教科書、捨てられた上履き。
有咲…雪奈……絶対に許さない…。
私の中の復讐心はどんどん膨らんでいく。
困惑気味に綾が2人の会話を止める。
沙月は腕を組み、静かに聞いていた。
その時、沙月の眉間にシワがよった。
沙月が拳を握り、麗美の机のところに行くと思いっきりなぎ倒し、ロッカーに向かうと、麗美の教科書をゴミ箱に捨てた。
私は4人に聞こえないくらいの小声で呟く。
沙月達が荷物を手に取った瞬間、私は忍び足でトイレに隠れる。
3人の声が聞こえなくなったところで私はそこまでの動画を保存すると、もう一度教室へ。
そう1人で怒鳴ると、3つの机を蹴飛ばした。
あらら…撮られているとも知らずに…。
このクラスの5軍と言えば、2人。
紅音と穂花だ。
穂花は常に正しいこと言うもんな…。
有咲は沙月の机を元に戻すと、机から強引に鞄を手に取った。
あ、出てくる…。
察した私は慌てて、隣の教室へ。
有咲の足音が聞こえなくなってから、教室に入る。
私は穂花の机を戻す。
そして、撮った動画を確認した。
『…峰本、ふざけんな!!!!!』
もろ、沙月の名前入り。
これでいつでも有咲を脅せる。
有咲の本心も知れて、明日から面白いことになりそう。
明日の学校が楽しみだなぁー…。
そう思いながら、私は教室を後にした……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。