第7話

陰口
8,076
2018/11/08 09:08
夕方になり、窓の外がオレンジ色に染まる。
私は本を片付けると、教室に向かった。
女子
それでさ〜…
女子
えぇ!マジー…
数人の女子の声。勿論、聞き覚えがある。
スマホで録画を始め、教室の前からカメラを少し覗かせる。
中にいたのは、沙月、雪奈、綾。どうやら、めぐみは部活で不在のよう。あとは私の予想通り、有咲。
新村 有咲
麗美っていつも猫かぶって他の
人に嫌われたくないんだよ!その子がいないときは悪口とか言ってるのに。
鈴木 綾
え、麗美ちゃんってそんなこと
する子だった?
有咲の発言に少し困惑の表情を浮かべた綾。
確かに麗美は人に嫌われたくなくて誰にでも優しくしようとしている。だけど、悪口とかを言っているのは私は見たことない。
広瀬 雪奈
まぁ、いいんじゃな〜い?寺島
ちゃんがそういう人だったって
だけでさっ?
峰本 沙月
てか、それなら何で一緒に行動
してんの?そんなやつなら無視
したらいいでしょ。
沙月がニヤッと笑うように有咲に聞く。
すると、有咲はスグに…
新村 有咲
まぁ、使えるだけ使っといた方
がいいし、麗美がいないと誰か
と組むのも組みにくいし、他の
人の悪口を言ってるのが聞けな
くなるもん。
広瀬 雪奈
桐山ちゃんは?新村ちゃん達と
仲良くない?
雪奈が私の名前を出した。
新村 有咲
あー、桃香?正直、嫌いなの。
何か根暗感があるし、そんなに
オシャレとかしなそうだし、何
か…平凡人間って感じ?
いないと思って言いたい放題してくれるね…
新村 有咲
てか、何かいじめられっ子的な
オーラが半端ないんだよね。私
そんなやつと絡みたくないし。
笑いながら話す有咲。
有咲の言葉に雪奈はお腹を押さえて笑う。
広瀬 雪奈
確かに桐山ちゃんっていじめら
れっ子感凄いよね〜!
笑う有咲と雪奈に比べ、私の顔は真っ青に。
蔑むような目、脳内に響く甲高い笑い声。
汚くなった教科書、捨てられた上履き。
有咲…雪奈……絶対に許さない…。
私の中の復讐心はどんどん膨らんでいく。
鈴木 綾
い、言い過ぎは良くないよ。
証拠もないのに、そんなに言うのは違うと思うな。
困惑気味に綾が2人の会話を止める。
広瀬 雪奈
えー、綾ってば、真面目ー。
峰本 沙月
……。
沙月は腕を組み、静かに聞いていた。
峰本 沙月
新村、それで本題は何なの?
広瀬 雪奈
そうだよ〜!どうでもいい話が多くて、本題がまだじゃん!
新村 有咲
あ、ごめんね。あの…言い難いんだけど、麗美が沙月ちゃんの悪口言ってたから一応教えようと思って…。
峰本 沙月
は?
その時、沙月の眉間にシワがよった。
鈴木 綾
何て言ったの?
新村 有咲
それはあまり…
峰本 沙月
いいからはっきり言って。
新村 有咲
……いつも女王気取りで調子に
乗ってる、見た目良くても性格
はゴミとか…。
峰本 沙月
寺島、アイツ……!
沙月が拳を握り、麗美の机のところに行くと思いっきりなぎ倒し、ロッカーに向かうと、麗美の教科書をゴミ箱に捨てた。
桐山 桃香
うわぁ…
私は4人に聞こえないくらいの小声で呟く。
広瀬 雪奈
沙月、どうするの〜?
峰本 沙月
…寺島を八神みたいに落とす。
調子に乗ってるのはどっちかを
思い知れ…。情報をありがと、新村。
新村 有咲
ううん!いつでも沙月ちゃん達の味方だもん!
鈴木 綾
そろそろ帰らないと塾が…。
ねぇ、そろそろ帰ろ?
峰本 沙月
あ、うん。
広瀬 雪奈
だね〜!じゃ、バイバ〜イ!
沙月達が荷物を手に取った瞬間、私は忍び足でトイレに隠れる。
3人の声が聞こえなくなったところで私はそこまでの動画を保存すると、もう一度教室へ。
新村 有咲
…峰本、ふざけんな!!!!!
そう1人で怒鳴ると、3つの机を蹴飛ばした。
新村 有咲
何がいい情報をありがとだよ!
あれは麗美じゃなくて、ウチが
日頃から思ってることだし!!
バーカ!!!読者モデルとかで
調子に乗ってんのはテメーだ!
マジでウゼーんだよ!!!
あらら…撮られているとも知らずに…。
新村 有咲
コイツも何だよ!5軍のくせに
いつも意見しやがって!!!
このクラスの5軍と言えば、2人。
紅音と穂花だ。


穂花は常に正しいこと言うもんな…。
新村 有咲
あぁ〜!!!ムカつく!!!!
有咲は沙月の机を元に戻すと、机から強引に鞄を手に取った。
あ、出てくる…。
察した私は慌てて、隣の教室へ。
有咲の足音が聞こえなくなってから、教室に入る。
私は穂花の机を戻す。


そして、撮った動画を確認した。
『…峰本、ふざけんな!!!!!』
もろ、沙月の名前入り。


これでいつでも有咲を脅せる。


有咲の本心も知れて、明日から面白いことになりそう。
明日の学校が楽しみだなぁー…。
そう思いながら、私は教室を後にした……

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