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私とあなたさんとの出会いは、児童相談所という場所からスタートする。
その当時私は22歳で社会人として働いていた。
今から5年ほど前の話だ。
彼女は14歳。
中学生だった。
私はいわゆる独身という身だった。
一種の気の迷いかもしれない。
養子縁組という制度が私の目に止まった。
「困っている子供たちを支えませんか?」
などという謳い文句を掲げ、にっこりと微笑む里親らしき人物。
そしてフリーダイヤルだという電話番号が小さく添えられていた。
本当に何を血迷ったのか分からないが、気づけば電話番号を自分の携帯に打ち込んでいた。
無機質な着信音と共に、少しの後悔が滲む。
何を私はやっているのだろう、とも思ったが着信を取りやめる前に女性の声がした。
その人の説明によると、養子縁組という制度を利用するためには、色々と研修を受けねばならないらしい。
何とめんどくさい。
普段の私であればバカバカしい、と制度に見向きもしなくなることだろう。
だが、その時は素直に研修を受けようという気になっていた私は今とは別人のように思えた。
研修を受けている際は、少し肩身の狭い思いをしたものの、やめてやるとは思わなかった。
私は、思ったよりも情深い人間なのだろうか。
様々な条件をくぐり抜け、里親として認められた私はこれからの選択肢について考えた。
実は、養子縁組と里親制度とは微妙に違うものらしい。
養子縁組は法的に親子になることが出来るが、里親制度を利用すると里親は親子の関係がない。
つまり、里親制度については、里親が親子関係になることがなく、実親が親であるとするものとなる。
ややこしいが、簡単に言えば親子関係に法的になるのかならないのか、になる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!