ないこside
まろの家に連れてこられて俺はさらにパニック状態になった
でもそれと同時に安心もした
あの調子だと手を出してもおかしくない
父さんはそういう奴だ
いくらアニキでも不安だった
そんな心配をした瞬間、アニキが帰ってきた
アニキが真剣な表情をして言った
なんというか、難しい顔をしていた
俺とまろはアニキの声に耳を傾けた
父さんがこんなのを見るなんて意外だった
でもよくよく考えれば、いれいすも大きくなったし、動画なんて誰もが簡単に見ることのできる時代
バレてもおかしくはなかった
家族のことはあまり言いたくなかったからこの時は曖昧に返事をしておいた
父さんがあのまま帰るはずない
それは俺が1番よく分かっていた
でも、本当のことは中々言えなかった
それからまた何日かたった頃
仕事があるから家を出ようと玄関のドアを開けたときだった
バタッ!!
気づけば俺は背中から倒れていた
例の人物が俺が動かないように全身でしっかりと床に押さえつけていた
あの時と同じ衝撃が頬に走った
…凄い痛かった
そこからどれくらい抵抗してただろう
抵抗するのに必死でどれくらい時間が経ったのか分からなかった
でも、いつまでこんな状態が続くんだろって心の奥底で感じるくらいだった
バサッ!!
俺が叫んだ瞬間、体が一気に軽くなった
何事かと思って見ると、あにきが父さんの体を押さえつけていた
そしてその後ろからもう1人
2人をギロリと睨みつける父
やっぱりあの日から父さんは狂ってしまったなと思う
父さんが再び俺を睨みつけた
でもそりゃそうだ
家庭が荒れたのは俺のせい、これは紛れもない事実
有輝を殺したのも間違いじゃない
でもそれをメンバーの前で言われたのが嫌だった
父さんを押さえつけてるあにきも、俺の横にいるまろもずっと俺の方を見ていた
それが凄く、怖かった
あにきがまろの方を見る
まろは黙って頷いて俺を連れて家から出ていった
まろの家に入ったとき、気まずそうに話しかけてきた
もう、ここで話すしかなかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!