樹「あなたきいて、お願いがある」
「あ、嫌です」
樹「いいからいいから大丈夫」
「私も大丈夫です、(聞かなくて)いいです」
樹「まあまあそう言わずに、こちらお掛けください」
「ね〜いやだ〜誰か助けて」
目があった人たち全員笑ってんだけど。
何わろてんねん。
樹「再来週の現場ついてきてくんね?」
「あ、嫌です。それでは。」
樹「まあまあまあ最後まで聞いてよ!」
立ちあがろうとする私の肩を、樹さんが無理やり押さえ込んで再度座らせる。
「いやいやいや、それ制作入ってるの慎太郎ですよね?100〜200程度の案件にわざわざ私要ります?」
(売値100〜200万の映像という意味)
樹「よく把握してるね!わかった、あなたこの案件に興味あったんだ?」
「ないです。」
樹「そんな顔すんなって、かわいい顔が台無しだな。」
「(無視)…浴室とかトイレ機器のメーカーでしたっけ。」
樹さんが無理やり渡してきた企画書と、画コンテに目を通す。
メーカーだけど、リフォームとかもやってるんだ。へー。
樹「演者が女性なんだけど、フォローに入れる女性スタッフがいなくて、」
「…あーなるほど」
樹「水着の上からタオル巻いて入浴シーン撮影するのにスタッフ全員男はやばいっしょ」
思ったよりまともな理由だったので若干感心する。(何だと思ってる)
樹「演者に変なプレッシャーは与えたくないからさ。お願い!あなたしかもう頼めないんだよね」
「…制作の外注入れるにしてもこの(予算)規模感だと利益率厳しいっすもんねー、、」
樹「風磨からはオッケーもらってる。あとはあなた次第で決めてって」
え、そんなんもう、断る理由ないやんけ、、
「わかりました、やります。風磨さんオッケーならなんも言えんですよ。」
樹「おっしゃ!じゃよろしく〜」
「待っていかないで香盤ください〜!」
てかもう根回し済んでるならほんと不毛なラリーだったな?
ため息かましつつミーティングスペースから自席に戻るとニコニコの慎太郎と目が合う。
「なによう」
慎太郎「あなたはいってくれるのめっちゃ助かる」
「私内勤だからこれが最後だからね」
慎太郎「前の案件でもおんなじようなこと言ってたね」
「…。」
本当に!これが!最後なんだから!!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。