第34話

33 届 か な い 場 所 .
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2024/05/11 08:48
   丈一郎 side















和也
「離してよッ…!!もう知らんって!」


丈一郎
「大橋ッ…!!…和也!!」














大橋は俺の腕の中で暴れている


だから俺は滅多に呼ばない,大橋の下の名を叫んだ


ぴた と動きを停めた大橋がこちらを振り向く



湿度の高い大きな瞳がこちらをみつめる

歪んだ形のいい眉と荒い呼吸で上下する肩。



俺はしっかりと大橋を見つめて



血色の良い整った唇に自分の唇を合わせる












和也
「…は、!? ⸝⸝⸝」


丈一郎
「…ホンマにごめん,おれ大橋が俺にキスしたこと知ってんで、?大橋、俺も好きやから。今,こんな時に言うことちゃうけど,これだけは嘘やないって知っといて?」


和也
「ッ…おれ,だって、」














んは、笑 大橋が照れるなんて珍しいな


俺たちはもう一度見つめあって深いキスを交わす



今この世界には 俺と大橋のふたりきり。

この上ない幸せ。











和也
「…しゃーなし今日だけ許したる、ただもう俺の前からいなくなったら…ホンマに許さへんから」

















ん、わかっとる 約束な.




















流星 side














流星
「ウゥ…ッグズ、ハアッ、スッ…」












一体俺の小柄なカラダのどこからとめどなく

溢れる涙が湧いてくるのだろうか.



ただそれだけ 俺には大事な人だってことが今更

痛感される。今の自分,ボロボロやろな、

ただもう, 今はどうだっていい。




西畑大吾が、目覚めればそれだけでいい。



大ちゃんが,ストレッチャーで運ばれたあの日から

一体どれだけが経過したか。俺には分からへん




大ちゃんは病院に着いて間もなく手術室へと

運ばれていった。永遠と思われるほど長い時間が

あけたあと,大ちゃんは俺に会う間もなく

ICUで過ごすことになった。ICUは一般病棟と違って

命の危険に特に晒されている人が入る部屋。


もちろんお見舞いなんて出来ないから

今もこうして, ガラス張りになってる窓から

か弱く動き続ける心臓音をただ,見続けるだけ



ピクリとも動かない 俺の大切な人



大橋くんと丈くんを守って自分が犠牲になった












流星
「だから俺言ったやん…ッ、はよ避難しぃやってさ、大ちゃん…言ったやん、俺は大丈夫やからって…なに昏睡しちゃってんの、アホ」











誰にも聞こえない声で大ちゃんにお説教。


泣いても泣いても,大ちゃんを想う形は終わらなくて











流星
「……俺やったら良かったのに,俺が火事に遭えば俺が苦しめば良かったのに、」













だなんて 自分を責めるコトバが日常になって



何しても無気力になってメンバーからの連絡も

返事出来ていない日々。













そんな俺に 追い討ちをかけるように残酷な現実が
















流星
「大ちゃん…ずーっとそこ寝てたら,体壊すで?早よ起き?……」












今日も届かぬ声を大ちゃんに届ける


毎日同じことの繰り返しなのに,涙だけは一丁前に

止まらなくて1回脱水症状にだってなりかけた













医者
「あ、大西さん…傷心なさってる所すみません、西畑さんのことで話があるので少しいいですか、?」


流星
「あ…はい,」



医者
「…すみません,全力を尽くしたのですが…今のままでは西畑さんが植物状態になる可能性が高くなってきてまして……」


流星
「…は?、し植物状態…? 嘘でしょ、?」


医者
「もちろん、西畑さんの頑張り次第です、、しかしこのまま目を覚まさないと西畑さんのカラダの機能も著しく低下していって命の危険すら出てくるんです、」












そんな、嘘や嘘やウソやうそやウソやっ…!



大ちゃんが 目を覚まさない…?





なぁ,大ちゃん… 嘘って言って、

あの八重歯見せて、



"嘘やで~? 流星驚かせてごめんな?" って

笑って、













流星
「ゥッ…うわあああアアアアッ…!!あぁぁッ…!嘘やんウソやん嘘やあぁッ!…有り得へん!ありえへん!だって大ちゃん俺のこと残すわけ無いやんッ…!
なぁ!早く大ちゃんを起こしてよっ!!俺の大ちゃん返して…!!お医者さんならッ大ちゃんを助けてよォッ!!なぁッ…!!」



医者
「おッ大西さん、!落ち着いてください!まだ植物状態って決まったわけじゃないんです…!」


流星
「落ち着けるわけ無いやろォッ…!!うわぁアァッ…グズ…ウゥ、お願いします…お願いやから,大ちゃんを救ってよ…!」


医者
「…最善は,尽くします、、」


流星
「…ッ!!」











俺は大ちゃんの眠っている部屋に入ろうとする










医者
「大西さん、!そこは入っては行けません!」


謙杜
「流星くん!!アカンて!1回深呼吸して!」













何、!?謙杜…

嫌や 俺を止めないで、大ちゃんのとこに行かせて












流星
「謙杜…離してッ、お願いやから…大ちゃんのとこに行かせてよ、、、」


謙杜
「流星くん1回屋上行こか.な?そこで少しお話しよ」

流星
「嫌や嫌や、!大ちゃんのとこおる…」


謙杜
「流星くん…」


医者
「長尾さん.大西さんを落ち着かせるためにも一旦ウチの精神科に案内します。長尾さんは気になさらないでください」


謙杜
「わかりました…よろしくお願いします、」












さすがに泣き疲れた俺はもう抵抗する気力すらなく

大人しく精神科に行くことになった
















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