第16話

第三章 もう一人の、彼-5
1,126
2018/11/14 01:23
一昨日のことを思い出しながら、ポツリポツリと説明を始める。
折坂くんは金網に凭れて腕を組み、じっと私の話に聞き入っていた。
時々眉間に深いシワが刻まれ、険しい表情になる。
何だか、告白された話を当の本人に説明するのが恥ずかしいやら、折坂くんのその顔が怖いやらで、上手く説明できたのかどうかもわからなかったけど。
私が話し終わると同時に、昼休みの終わりを告げる予鈴のチャイムが鳴った。
長谷部鈴
長谷部鈴
…………
他の生徒達が、わらわらと扉へ向かって歩いていく。
チラッと折坂くんの顔を窺うと、折坂くんはゆっくりと金網に凭れていた体を起こした。
折坂孝平
折坂孝平
……ありがと、長谷部
長谷部鈴
長谷部鈴
えっ。あ……いえ
折坂孝平
折坂孝平
あと悪いんだけど……。放課後もうちょっと、話聞いてもいいかな
長谷部鈴
長谷部鈴
え。……うん。あ、でも、委員会の後になるけど
折坂孝平
折坂孝平
委員会って……。ああ、学祭の
長谷部鈴
長谷部鈴
うん。遅くなるけど、それでもいい?
折坂孝平
折坂孝平
────わかった
折坂くんはふぅっと大きく息を吐き出した後、何かを言い淀む素振りを見せた。
まだ何か言おうとしてるのかな、と思い、彼の口元を見つめながらじっと続きを待っていると。
折坂くんは人差し指で頰を搔きながら、スッと私から目を逸らした。
折坂孝平
折坂孝平
昨日は……ホントにごめん。感じ悪くて
ボソッと言った後、彼の顔がうっすら赤く染まる。
その表情に、私はびっくりして息を飲んでしまった。
折坂孝平
折坂孝平
記憶ないのちょっと不安になってた時に身に覚えのないこと言われて……。八つ当たりっぽくなったっていうか……キツい言い方になって、ごめん
長谷部鈴
長谷部鈴
…………!
ペコンと頭を下げられて、私はブンブンと勢いよく首を横に振った。
長谷部鈴
長谷部鈴
う、ううん。気にしてない。平気
ホントはめちゃくちゃヘコんで気にしまくってたけど。
理由聞いたら、仕方がないなって思えたし。
謝ってもらって、ちょっと気が晴れたというか。
ぎこちなくだけどニコッと折坂くんに笑いかけると、私の顔を見た折坂くんは少しホッとしたように表情を和らげ。
……そうして照れたように、小さく笑い返した。

───ああ、また。

初めて見る表情。
私が知らなかっただけで……多分折坂くんは、もっといっぱい色んな顔を持ってるんだろうな……。

プリ小説オーディオドラマ