暮れなずむ空気の中、彼の優しい笑顔だけがくっきりと浮かんで見えるようだった。
好きだって単語を耳にして、ドキッと心臓が大きく跳ね上がる。
彼がホントに幽霊なのだとしたら……幽霊は怖いものっていう概念を覆さなくちゃいけないのかもしれない。
だって……こんなに爽やかに笑って、キュンとさせてくれる幽霊なんて、ホントに存在するの?
ドギマギしている私に気付かない様子で、彼は膝を抱えるようにして金網に背中を預けた。
そうしてふっと何処か遠くを見るように、目を細める。
吐息交じりの彼の言葉を聞いて、私はハッと顔を上げた。
ケロッと、彼は肯定した。
次から次に色んな事実が発覚して、完全にキャパオーバーだった私は、ただただ呆然と彼の顔に見入るしかなかった。
でももし、彼の言うことが本当なのだとしたら……。
折坂くんの態度も、納得できる。
告白なんかした覚えもないのに、ろくに話したこともないクラスメートから告白の返事をしたいなんていきなり言われたら。
気持ち悪いし、怖いって思うよね。
冷たいように感じたあの時の態度も、それを考えたらしょうがないのかもしれない……。
そこまで考えて、私はふと首を捻った。
誰かに乗り移って、心残りだったことをやり遂げたいっていうのは……まだ何となく理解できるとして。
でもそれがなんで、他の誰でもない折坂くんでなければならなかったんだろう……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。