少しずつ陽が沈んでいき、彼の顔も徐々に闇の中に溶け込んでいく。
そんな中、私の口の中はカラカラに渇いてしまっていた。
確かに、今目の前にいるこの人は、折坂くんとは別人だ。
──そう思うのに。
やっぱりまだ、私は半信半疑だった。
だって……だってこんなこと、すぐには信じられない。
折坂くんは私をからかってるんじゃないか…って。
そんな思いがどうしても拭い去れなかった。
黙り込んでしまった私の顔を覗き込むようにして、彼はそう聞いてきた。
急に彼の顔が近付いてきて、私は慌てて上半身を後ろにのけ反らせる。
膝に力が入らなくなってそのままペタンとその場に腰を下ろすと、それに倣うように彼も私の向かいに腰を下ろした。
恐々尋ねると、彼は少し間を空けてから「んー…」と言って困ったように空を仰いだ。
そう呟いた彼の声は、どこか少し寂しそうだった。
まぁ、確かに……。
自分が何者かわからないけど、幽霊だってことはほぼ間違いなくて。
それってつまり、もうこの世にはいない……って、ことだもんね。
何を言っていいかわからなくなり、何となく目線を下げて俯くと。
彼はすぐに気を取り直したように、こちらに向き直った。
柔らかく彼が微笑み、真っ直ぐに私を見つめる。
あまりにも真っ直ぐに見つめられて、私は金縛りにあったみたいに動けなくなってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。