第16話

3.西内くんのヒミツ-3
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2018/08/29 04:36
お店を出た後は、引き続き商店街を散歩した。
夕方になり、そろそろ解散かな? と思っていると、西内くんから
西内蓮
西内蓮
近くに海があるから見に行かない?
と誘われた。
もう少し一緒にいたかったから、誘ってもらえてすごくうれしかった。
それに、好きな人と海を眺めるなんてロマンチック。
思ってた通り、今日は素敵な一日になりそうだ。
──商店街から十五分ほど歩くと海が見えた。
青から夕陽の色へと変わるグラデーションの空、太陽の光が水面に反射した海はとても幻想的だ。
桜井心春
桜井心春
すごくキレイだね……
砂浜から海を眺め、太陽が沈んでいく様子を見守る。
まだ春だから海風は冷たい。両腕をさすっていると、西内くんが上着を脱いで肩にかけてくれた。
まだ服には西内くんの体温が残っていて、あったかい。
それに、なんだかいい香りがする。
西内蓮
西内蓮
寒いから、これ着て
桜井心春
桜井心春
でも、西内くんが風邪引いちゃうよ?
西内蓮
西内蓮
俺は大丈夫だよ
西内くんの穏やかな笑顔を見ているだけで、夢を見ているような気分になる。
彼が優しくしてくれるたび、笑顔を見せてくれるたびに恋する気持ちが大きくなる。
私、片想いしていたときよりもずっとずっと、西内くんのことが好き……。
あの時、勇気を出して告白して本当によかった。
西内蓮
西内蓮
──告白してくれたときのこと、覚えてる?
桜井心春
桜井心春
えっ? もちろん、覚えてるよ
告白したときのことを思い出していたから、西内くんからのこの質問にはすごく驚いた。
こういうのを以心伝心っていうのかな。
西内蓮
西内蓮
あのとき、俺……〝普通の恋愛ができない〟って言ったよな
桜井心春
桜井心春
うん、そうだったね
西内蓮
西内蓮
その理由を……桜井には話しておこうと思って
彼は肩にかけていたバッグを砂浜に置き、何かを出そうとしている。
桜井心春
桜井心春
……何してるの?
西内くんは料理で使うめんぼうのようなものを摑んでいた。
上に引き上げるにつれ、それが思ったよりも長く、大きいものだと気づく。
桜井心春
桜井心春
えっ、ほうき? なんで……!?
西内くんが手に持っていたのは、よく外で使うような竹ぼうきだった。
彼はなぜか、それにまたがろうとしている。
西内蓮
西内蓮
みんなにはヒミツな
そうつぶやいた瞬間、彼を乗せたほうきがふわりと浮いた。
まるで鳥のように、空を飛ぶのが当たり前かのように、西内くんは砂浜から三メートルほど高く浮いている。
その姿はまさに──魔法使いだった。

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