お店を出た後は、引き続き商店街を散歩した。
夕方になり、そろそろ解散かな? と思っていると、西内くんから
と誘われた。
もう少し一緒にいたかったから、誘ってもらえてすごくうれしかった。
それに、好きな人と海を眺めるなんてロマンチック。
思ってた通り、今日は素敵な一日になりそうだ。
──商店街から十五分ほど歩くと海が見えた。
青から夕陽の色へと変わるグラデーションの空、太陽の光が水面に反射した海はとても幻想的だ。
砂浜から海を眺め、太陽が沈んでいく様子を見守る。
まだ春だから海風は冷たい。両腕をさすっていると、西内くんが上着を脱いで肩にかけてくれた。
まだ服には西内くんの体温が残っていて、あったかい。
それに、なんだかいい香りがする。
西内くんの穏やかな笑顔を見ているだけで、夢を見ているような気分になる。
彼が優しくしてくれるたび、笑顔を見せてくれるたびに恋する気持ちが大きくなる。
私、片想いしていたときよりもずっとずっと、西内くんのことが好き……。
あの時、勇気を出して告白して本当によかった。
告白したときのことを思い出していたから、西内くんからのこの質問にはすごく驚いた。
こういうのを以心伝心っていうのかな。
彼は肩にかけていたバッグを砂浜に置き、何かを出そうとしている。
西内くんは料理で使うめんぼうのようなものを摑んでいた。
上に引き上げるにつれ、それが思ったよりも長く、大きいものだと気づく。
西内くんが手に持っていたのは、よく外で使うような竹ぼうきだった。
彼はなぜか、それにまたがろうとしている。
そうつぶやいた瞬間、彼を乗せたほうきがふわりと浮いた。
まるで鳥のように、空を飛ぶのが当たり前かのように、西内くんは砂浜から三メートルほど高く浮いている。
その姿はまさに──魔法使いだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。