第7話

呪いの本憑。
7
2024/05/13 06:33
初夏
初夏
マフア……さん?
あまりにも姿の違う彼を見て、僕は流していた涙の存在すら忘れて、息を飲んでいた。
マフア?
マフア?
……
彼が持っているのは禍々しく、黒い本。
まるで、呪術書みたいだ。
初夏
初夏
僕のメモを破いたって、どういうこと……
まずは思ったことを口にする。

今まで、色んな本憑と話した。
クソみたいなウザったい緑の英雄、
美麗で儚い上下巻の貴族、
時代が追いついていけないような変わり者、
神のように全てを見透かす予言者。


全て、みんなが空気を読んでくれた。
でも、今回は違う。言葉を間違えれない。
マフア?
マフア?
どういうこと…か
簡単だよ
マフア?
マフア?
後悔させたくない、君に
初夏
初夏
だから…それがなんでかを知りたいんですけど
少し言葉を強くしてみる。
マフア?
マフア?
……オレの名はマフア、全世界から恐怖された魔導書「ネクロノミコン」の本憑だ
初夏
初夏
……それって、ラヴクラフトのクトゥルフの呼び声に登場する架空の本ですよね
マフア?
マフア?
……詳しいな
マフア?
マフア?
ただ、架空は違うな
ネクロノミコンは存在している
マフア?
マフア?
ただ、全世界の人間が恐れ、すぐに、その存在を架空としただけだ
彼は、いつものように淡々と言う。
マフア?
マフア?
わかるか?
今まで、貴様は興味を持たれただけの歴史書などは会ったかもしれない
マフア?
マフア?
ただ、恐れられて生まれたのはオレだけだ
マフア?
マフア?
架空とされた今でも、ネクロノミコンは一部の人に恐れらている
あまりの恐ろしさから架空とされ、それでも恐れられる程の魔導書、それが彼の正体。
誰も館長室に入れない、本を見せない理由がそれだとしたら納得がいく。
マフア?
マフア?
魔導書に対する不安、焦燥、それがオレだ
「ま」導書への不安「ふあ」ん
それが彼。
マフア?
マフア?
言われたんだ、前ここを作った人に
マフア?
マフア?
お前は恐ろしい、と
マフア?
マフア?
だからここに封印する必要がある
人目に着いちゃいけない場所なんだ
初夏
初夏
でも、それとメモになんの関係が…!
まるで彼と話の辻褄が合ってないようにも感じるが、質問を続ける。
マフア?
マフア?
いいのか?
聞いても後悔をしないのか?
まるで念を押すように、彼は聞いてくる。
初夏
初夏
元々、知る運命です
教えてください
そうすると、彼は僕に破れた切れ端を見せる。
マフア?
マフア?
ここに書かれた作者は、すでに、1年前に病死をしている
そして、ここに書かれた住所は、半年前火事で全て焼け焦げている
マフア?
マフア?
つまり、君がどうして生まれたのか知る術がもう君にはないんだ
初夏
初夏
じゃあ、最後の質問
貴方は誰だ?
素直に思ったことを言う。
初夏
初夏
僕の知っているマフアさんじゃないですよね
マフア?
マフア?
貴様の知っているマフアは、自分の運命を隠して、取り繕っている図書館長としてのマフアだろう?
マフア?
マフア?
……オレは本憑としてのマフアだ
取り繕うためなら、人格を壊すくらい普通にする
マフア?
マフア?
呪いの書にもそれの仕方はある
彼は、創設者に図書館長としてここに半分封印された状態となっている。
そんな環境、しかも誰かが、恐れる感情が常に流れ込まれるような、そんな状態がずっと続いている。

僕ら本憑が、遠くでも自分に寄せてる心情がなんとなく理解できるからだ。

それは分離させなきゃやってられない。
マフア?
マフア?
そろそろ弱みを見せるのもやめよう
マフア?
マフア?
……君だけだぞ?
彼はそう笑うと、魔導書を書架の奥に隠す。
図書館長・マフア
図書館長・マフア
それで、メモの件はどうするの?
いつものように、取り繕ったマフアさんは、そう聞いてくる。
図書館長・マフア
図書館長・マフア
一度、書かれた場所に行ってみる?
それとも何も無いと読んで行かない?
初夏
初夏
行ってみます、絶対に何かあるはずです
なぜだか知らないけど、確かにそういう気がした。
確信に近いような、誰かに導かれるような感覚だ。
図書館長・マフア
図書館長・マフア
これだけ念を押して行くと言うならば、後悔はしないだろう
図書館長・マフア
図書館長・マフア
なら行って来い、そこに何があるか、何を見つけるか、それとも何もないかは君次第だ
図書館長・マフア
図書館長・マフア
おそらく、オレは見つけれない君にしか見えないものもあるはずだ
初夏
初夏
わかりました、行ってきます
彼から、大事に保管されていたであろうメモの切れ端を貰うと、僕は図書館の入口へと歩いていった。







はい、どうも作者です。

気がついたらランキング入りしてましたね〜。
もう中盤の後半、でしょうか。
早いですね。

欲を言えば、もっと色々な人に読んで欲しいですし、☆つけて欲しいですし…

でもまずは完結することが最初です。
更に欲を言えばスポラしてほしいですけど

あと少し、全力で駆け抜けるので、よろしくお願いします٩(๑òωó๑)۶

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