記憶にある中で、ほぼ初めての外。
本が日焼けしないように上から日光を遮る紙を被せる。
本が日焼けするのはもちろん嫌だけど、僕も黒くなりたくない。
なんて思いながら、図書館を出る。
予想外の声だ。
なんでこの人が、ここに?
何も言い返せない。
でも確かに、この人になら信頼できるかもしれない。
僕より長く生きて、且つ外の世界を多く知っている。
半ば無理やり手を握られると外の世界に連れ出される。
凄く眩しい、書架に囲まれた木漏れ日の差すテーブルとは全く違う。
意外だ。
あの人はそういうの気にしないで外に出てそうなのに。
うん、僕の心の中は彼に見透かされているようだ。
表情わかりにくい方なのにな、僕。
いくらか歩いた辺りで休む。
地図本を広げて、メモに書かれた住所へと向かう…も、思ったより遠くて僕が暑さ負けしてしまったのだ。
あれ?遠くの公園に誰か……気配的に本憑っぽい気がする。
真冬さんも同意見らしい。
もしかしたら、その本憑も和服を着ているから、真冬さんは自分と似たものを感じたのかもしれない。
僕は恐る恐る、声をかける。
何人と話したとこで相変わらずこの癖は抜けないようだ。
もしかしたら僕の生まれに関係していることなのかもしれない。
そういえば、本憑の名前について気になることがあった。
マフアさんが付けたって言ってた僕みたいなのもいる。でも僕が話してきたのはみんな自分で名乗っているのがほとんどだ。
一体どこから由来が来てるのだろう。
真冬さんと違い、本当に古風な喋り方。
それにこの角ってもしかして…。
やっぱり鬼だ。
日本古来からの鬼の姿と重なる。
どうやら、本憑の名前の由来の大半は自身の本に関係しているようだ。
自然と防衛本能か、少し自分の本を握る力が強まる。
でも…。
手が力を緩め、こう答える。
気がついたら、遠回しに本の中身がないと言うことを僕は素直に言えるようになったらしい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。