第8話

道中、暁の書を眺めて。
8
2024/05/15 09:55
記憶にある中で、ほぼ初めての外。
本が日焼けしないように上から日光を遮る紙を被せる。

本が日焼けするのはもちろん嫌だけど、僕も黒くなりたくない。

なんて思いながら、図書館を出る。
















真冬
真冬
やあ
予想外の声だ。
なんでこの人が、ここに?
初夏
初夏
えっと…何故ここに?
真冬
真冬
いや、君が外に出るってマフアが言うから保護者的な
初夏
初夏
いや、貴方の方が見た目幼いですよね
真冬
真冬
これは、本に出てくる貴族がこんな姿してるからこういう姿なだけで、実際の俺は1000年以上生きた本だぞ
初夏
初夏
っ…
何も言い返せない。
でも確かに、この人になら信頼できるかもしれない。
僕より長く生きて、且つ外の世界を多く知っている。
真冬
真冬
それじゃ、行こうか
半ば無理やり手を握られると外の世界に連れ出される。
凄く眩しい、書架に囲まれた木漏れ日の差すテーブルとは全く違う。
真冬
真冬
最初はチカチカするよね、わかるよ
初夏
初夏
真冬さんもそうだったんですか?
真冬
真冬
勿論、思っていたよりも日光が眩しくて困ったものだったよ
真冬
真冬
沙華なんて引きこもってしまったしね、日光が嫌すぎて
意外だ。
あの人はそういうの気にしないで外に出てそうなのに。
真冬
真冬
意外、って思ったでしょ?
アイツ、凄い繊細なんだよ、多分書の中の貴族がそういう人だったから
うん、僕の心の中は彼に見透かされているようだ。
表情わかりにくい方なのにな、僕。
真冬
真冬
いやあ…暑いね、最近は、大丈夫?
初夏
初夏
…そうですね……
いくらか歩いた辺りで休む。
地図本を広げて、メモに書かれた住所へと向かう…も、思ったより遠くて僕が暑さ負けしてしまったのだ。


あれ?遠くの公園に誰か……気配的に本憑っぽい気がする。
真冬
真冬
あれ…本憑っぽいね、声かけてみようか
真冬さんも同意見らしい。
もしかしたら、その本憑も和服を着ているから、真冬さんは自分と似たものを感じたのかもしれない。
初夏
初夏
あの〜…
僕は恐る恐る、声をかける。
何人と話したとこで相変わらずこの癖は抜けないようだ。
もしかしたら僕の生まれに関係していることなのかもしれない。


そういえば、本憑の名前について気になることがあった。
マフアさんが付けたって言ってた僕みたいなのもいる。でも僕が話してきたのはみんな自分で名乗っているのがほとんどだ。
一体どこから由来が来てるのだろう。
月光丸
月光丸
なんじゃお主?
真冬さんと違い、本当に古風な喋り方。
それにこの角ってもしかして…。
月光丸
月光丸
我は鬼の本憑、月光丸じゃ
月光丸
月光丸
して、お主は?
やっぱり鬼だ。
日本古来からの鬼の姿と重なる。
初夏
初夏
えっと、僕は初夏
真冬
真冬
俺は真冬、歴史書の本憑をしてる
真冬
真冬
名前の由来は、歴史書の中にいる貴族の名前だ
月光丸
月光丸
そうか、我も主人公の名から来てる
どうやら、本憑の名前の由来の大半は自身の本に関係しているようだ。
月光丸
月光丸
お主は?
初夏
初夏
僕は…
自然と防衛本能か、少し自分の本を握る力が強まる。

























でも…。
初夏
初夏
主人公がいないので知り合いが付けてくれました
手が力を緩め、こう答える。

気がついたら、遠回しに本の中身がないと言うことを僕は素直に言えるようになったらしい。

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