あれから1ヶ月以上経って、12月の半ば。毎日カタカナで書かれた暴言を手がかじかんでしまう程冷たい水で雑巾を濡らし、毎朝拭いていた。犯人も現れないし、変な注目は面倒だしと理由をつけていた麗綺だったが実は怖かっただけ。
前は気にせず生きれたものの最近はそうともいかない。兄弟ができた。たったそれだけの事だがいつまでもなれぬ生活と関係。
だが、絶交もしていないのに全く話さぬ日が1ヶ月以上続いている。小学生のようにあっけらかんと過ごせればどれほど楽になれるのだろうか。
あかぎれが酷い。
きっと毎朝の水仕事のせいだ。突き出してしまえばいいもののそれを恐れているからだ。馬鹿だからだ。麗綺のこころの中でぐるぐる回る思考に頭を悩ませながら蛇口をとめた。
雑巾を絞って教室へ向かうとそこには人の影があった。
透の姿があった。その目は麗綺の机に向けられている。何も分からない。一体何がどうなってそうなるのかも。
しょうがなく、机に向かって無理やりにでも拭いてやろう。その気持ちでゆっくりと歩いて机に雑巾を置いた瞬間に麗綺は腕を掴まれた。…結構強めに。
じゃあ、なんであの時。
毎日毎日。
なんでなんで。
何も分からない。何もかもがぐちゃぐちゃで死にそうになった時、麗綺の傍には誰がいた?誰もいなかった。馬鹿にされて、たまに殴られて、聞きたくないもの聞かされて。
その上、兄弟に無視される。
早く死にたい。小説書くとかどうでもいい。墓もつくられないうちに死にたかった。麗綺はそう思った。
そういった透は麗綺の腕を強く掴んだ。麗綺は痛くて堪らなかったが振りほどいてはいけないい気がした。
その目は本気だった。かつて誰も見た事ないような目で。きっとおかしくなる。今までだって変わってきたんだから。でも、
この人と兄弟になれて良かった
何がどうなっても、たとえ犯人が出てこなくても
どうだっていい
乗り越えていける
きっとこれからも
だからこれからも
これからも兄弟としてよろしくお願いいたします
8:00
2人きりの教室で兄弟としての約束を
結んだ2人だった。
「底辺カースト女子の憂鬱」
完結
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。