once「キャー!!サナやーーー!!」
once「TWICE〜!!」
沢山の人気グループが毎年違うセッティングのステージに立ち、
各グループ沢山の方に聞いていただいた曲を披露する。
そんな1年の中でも大きなイベントのmama。
mamaという大きなイベントに来てくれた方の中には
様々なファンが来てくれている。
だからステージから見る光り輝くペンライトが
色んな色をしていてすごく綺麗。
ありがたいことに、
そんな素敵なステージで
私たちTWICEもパフォーマンスをすることが出来た。
キャンディーの形をした私たちのペンライトを
一生懸命振っているonceをステージから見つける度に、
私たちTWICEは幸せな気持ちでいっぱいになる。
…
ステージと最後の挨拶が終わって、
TWICEの楽屋に戻ってきた私たち9人。
そして部屋に着くや否や、コソッと私を褒めてくれたこの美しい女性は
湊崎紗夏。
私の大事な大事な彼女。
そんな彼女はいつも天真爛漫で、
どんな人にでも親切に接する心まで美しい女性。
日々笑顔を絶やさない彼女だけど
ライブや大事な時には誰よりも頼りがいがあるメンバー。
楽屋の入口近くで話しているモモとツウィ。
確かに今日のステージ皆活き活きしてた。
コロナウィルスの関係で、
なかなかファンの方と一緒の空間を過ごすことが難しくなってたから、
久しぶりにonceや、他のグループのファンの方の声援を聞けて私達も気持ちが上がってしまった。
やっぱり私たちはファン方がいてくれるから頑張れるんだってわかった。
私は今日のステージを思い返していると、
サナがメンバーのために水を買いに行くと言い出した。
私はそんな彼女について行こうとしたけど、
止められてしまった。
きっとサナも今すぐにでも座って一息着きたいはずなのに、
メンバーの為に1人で9人分の水をもってこようてしている。
サナ。優しいにも程があるよ。本当に…。
「すぐ戻るなー!」と言って、
お財布を片手に楽屋から飛び出して行ったサナ。
いつもだったらこんなこと感じないけど、
私たちに背を向けて部屋を出ていくサナの背中が何故か遠く感じる。
恋人なんだから…もっと甘えてくれていいのに。
1人で全部やろうとなんて思わないで、
水くらい一緒に買いに行こうよ。
そう思うとなんだか切なくなった。
コロナがだいぶ治まってきた今、
ありがたいことにたくさんのお仕事をいただけて、
私達は毎日頑張っている。
昼夜構わず撮影場所への移動やMV撮影など、
目の前のことにとりあえず精一杯すぎて、
最近サナと夜のそういうことも出来てない。
だからってそのせいにはしたくないど、
日々メンバーの為にメンバーの為にって忙しく動いてるサナ見ると、
いくら私でも、
ちょっとだけ…妬いちゃうよ…?
たまには私だけ見てくれてもいいのに。
メンバーの為に何かするなら、
私も一緒にやるのに。
あー、ばかばか。考えすぎ。
サナのメンバーへの優しさなのに、
恋人の私がそんなこと考えてどうするんや。
これじゃあサナの気持ちを踏みにじってるみたいなもんじゃないの。
ぼーっとしていたらしい私に声をかけてくれたダヒョンは、
「食い違いが起きる前に気持ちを話した方がいい」
とだけ言い残して、
そのままチェヨン達のいる方へと戻った。
ダヒョンが私にかけてくれたその言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡る。
「食い違い」
…うん、確かに。
ダヒョンが言った通りだ。
サナは私の恋人なんだから、
変に私が気持ちを隠していた方がサナも嫌だよね。
楽屋の扉を開けようとしたところで、
チェヨン達のところにいるダヒョンが、
こっそりニコッとしながら私にグッドマークしてくれたのに気がついた。
ダヒョナ。
私はダヒョナのそういうところにいつも救われてるで?
ありがとな。
…
確か自販機はここからは遠くないはず。
私は楽屋から出て長い長い廊下を1人で歩く。
ここで私はふと思った。
自販機が楽屋から遠くないならサナはすぐ戻ってくるはずなのに、
思い返せば楽屋に全然帰ってこなかったこと。
少しは変だと思うべきなのに、
自分のことばっかり考えてて、サナの様子に気づけなかった。
こういうところがやっぱり私ダメなんだと思う…。
大丈夫かな…何かあっていなければいいけど…。
そう思う気持ちが私の歩く速さを早める。
廊下を歩き出して数十秒もしないうちに、
私は聞きなれた女性の声が聞こえた。
サナだ。
この声は間違えなくサナ。
何を話しているかはまだ聞き取れないけど
声が聞こえるってことは誰かと会話してること…?
1歩歩く事にどんどん鮮明に聞こえるようになる会話。
角を曲がるともう見える自販機を目の前にして、
サナと会話している相手の声が聞こえた時、
私はピタリと曲がり角で止まってしまった。
あの声は…、BTSのジョングクさん?
なんでジョングクさんがこの階に…。
………。
落ち着いて私。
ただのアイドル同士の会話よ。
なのになんでこんなに心臓がうるさいの。
他の事務所の方だからといって顔を合わせたのに一言も喋らない方が失礼よ。
だからサナもあんなにニコニコしてるし、
onceと握手会をする時みたいに笑顔なのよ…。
けどなんであんなに楽しそうなの…。
…駄目。悪いこと考えちゃダメ。
この感じは…会話が終わった…?
2人の声がピタッと止んで、
スタスタと私たちの楽屋とは反対側の方向へ歩く音が聞こえる。
その音でジョングクさんが戻って行ったんだなって分かった。
それにしても、
久しぶりにあんなに声の明るくて可愛らしい笑い声聞いた。
無邪気で何色にでもそまれるような程に真っ白で
汚れ1つない透き通った声。
……。
ねぇ、サナ。
何か勘違いしてるんじゃないの…?
その声を聞かせるべきなのは、
BTSのジョングクさんじゃなくて、
私だよね。
曲がり角で突っ立っていると、
足が動き始める音がした。
来る。
サナは私たちの所に戻ろうとしてる。
ごめんなサナ。
本当は盗み聞きするつもりはなかってん。
私が思っていたタイミングとほとんど同時で
サナは曲がり角を曲がって来た。
私がいることに驚いてボトボトと抱えていた9本分の水を落とす。
そうだよね。
いるとは思わんよな。
サナ。
貴方は気づいてないのね私のこの気持ちに。
眩いくらいに綺麗な心の持ち主とは反対に、
少し黒くなった私の心。
こんな状態でも私の心配をしてくれるサナに、
私の中にある何かがプチッと切れた音がした。
なぁサナ。
分からしたるよ。
貴方が何をしたのか。
もう止まらんから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。