今日受ける講義は全て終わった。
残すは約束の詞音とのデート…
デートとか思ってなかったから普段の動きやすい服装だしオシャレも何もないんだけど…
てか、ずっと幼馴染みだった詞音とデートとか全然想像できない…
『いお』
…ん?この声は…
言っておきたいこと…?
そういえば、いつだったか、「若い男の子とデート()してきた」ってうっとりしながら自慢してきた時があったな…
まさかあれが詞音とのデートだったとは…
輝音が何か言いたげだったけど、時間がないので先に教室を出た。
え…?
なんか眩しいんですけど…
詞音がさらっと手を繋ぐ。
普段の詞音からは想像できないくらい優しいんだけど…⁉︎
さりげなく車道側歩いてくれてるし、手繋いでるから肩が触れそうなくらい距離も近いし…
落ち着け私、これはあの詞音だ。
きっと他の女の子にも同じように振る舞ってるはず…
詞音にあーんされながらアイスをシェアする。
詞音が口を開けて待つ。
私はおそるおそる詞音の口に自分のアイスを運ぶ。
今度は私が口に運ぶ前にかぶり付く。
…って、近い…!
そうだ、相手は詞音…
顔がいいだけであのバカでチャラい奴!
詞音はさらに顔を近付け…私の頬にキスをする。
あー…
詞音がモテる理由が今日でよく分かった。
女の子がしてほしいことや言ってほしい言葉を詞音はよく分かってる。
詞音のおかげで手の上に垂れただけで何とか済んだ。
それから服を買い、プリを撮って、夕飯を食べ、帰った。
ガチャッ。
詞音に感情を振り回されたからか、なんだかとても疲れた。
まぁでも、言ってたみたいなやらしいこととかはされなかったな。
「衣織おかえり、輝音くんが部屋で待ってわよ」
「リビングだと私とお父さんがいるし気を遣わせちゃうでしょ、ほら早く行きなさい」
てか、どうしたんだろう…
輝音はいつも夕飯食べたらすぐ自分の部屋に戻るのに…
ガチャッ。
部屋に入るなり、輝音に抱き締められる。
ふいに、詞音に頬にキスされたことを思い出す。
輝音が唇を噛んで悔しそうにする。
確かにあんなことされたの初めてだけど…ちょっとドキッとしただけで…
手で目を覆われる。
輝音が俯く。
私が指で頬を触ると、そのすぐ横に輝音がキスをする。
輝音はそう言うと…さっきより少し表情が明るくなった。
ガチャッ。
詞音が強引に輝音を引っ張って行った。
詞音が急に来たのも驚いたけど…輝音があんなことするなんて…
それに、元はと言えば詞音にもほっぺにキスされて…
幼馴染みと言えど、一応異性。
でも、昔からずっと一緒に育ってきたんだから、そんな目で見たことなかった。
あの二人はどういう気持ちで私にあんなことをしたの…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。