輝音が私のいる教室へ迎えに来る。
「あの噂デマだったとはいえやっぱり輝音くん茅野さんと仲良いよね」
「ね、茅野さんは詞音くん派みたいだけど輝音くんはもしかしたら…」
…はぁ、やっぱり誤解は解けても色々言われるもんだな〜…
やっぱりそろそろ…
何より二人といると私が普通に恋愛どころか友達作るのも難しいんだよ…
輝音がここまで心を閉ざすのには理由がある。
それは…きっと、あの過去だろう。
高校生の時の輝音は、今ほど誰に対しても拒絶的ではなかった。
この二人は高校生の時に輝音と仲の良かった友達。
輝音に顔をつままれる。
私が痛がりながら渡すと、輝音が不機嫌そうに受け取り、手を離す。
池田くんが私のつままれた頬に触ろうとすると、輝音が池田くんの手をつまむ。
…でも、二人の様子を見てると、あの輝音にも変わらない態度で接してくれる友達ができてよかったのかもな。
そう思っていた時だった。
私は笑顔で輝音を見送った。
その日の夜遅く、詞音が私の部屋に訪ねてきた。
輝音…池田くん達と一緒にいるなら無事、だよね…?
池田くんと繋がったのか。
詞音が電話を切る。
そう。
輝音はお酒の匂いが昔から苦手だった。
アルコール消毒などでも過敏に反応してしまうので、消毒する時は絶対顔を背けて1分は触らないようにしていた。
私達が車で駅前まで行き、30分ほど探したのち、走って逃げてきた輝音を見つけることができた。
輝音の話によると、池田くん達の知り合いの先輩にクラブに連れて行かれ、大学生の女性を紹介され、ホテルまで誘導されかけたらしい。
輝音はそのことがトラウマで1週間ほど学校に行けなくなってしまったが、私と詞音が引っ張り出すと何とか通えるようになった。
しかし、それからは今のように、私と詞音以外には完全に心を閉ざすようになってしまった。
こればかりはあまり強く言えないんだよな…
輝音に腕を掴まれる。
輝音に抱きしめられる。
輝音は少し笑いながら離れる。
てか急に可愛いとか何言ってるの…⁉︎
詞音にもこの前からやたらと可愛いって言われるし…
私からわざわざ言う意味とかあるの?
「いいじゃん」って何がだよ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。