渡辺side
目が覚めたら、僕は布団の中にいた。
電気も消されている。しかし、隣に居るはずのあの人は居ない。
頭痛が酷い。
取り敢えず、寝室から出ることにした。
ガチャッ
明りは付いているが、あの人の姿は見当たらない。
ふと壁に掛けてある時計を見て、真夜中であることを知った。
状況がまだ掴めない。
フワフワとしたまま洗面所へ向かう。
顔でも洗ってスッキリしよう。
首元にじわっと赤くなった痕を見つける。
"アレ"だよな。
え?なんで…。
てか、誰に…。
波のある頭痛による苦しみが襲い掛かってくると同時に衝撃の強い記憶が蘇っていく。
ドスッ
腰が抜けた。
それから、視界がぼやけて目から溢れる水が滴った。
俺は、何をしてるんだよ。
俺は、…俺は、、、
声のした方に顔を向ける。
そこにはコンビニ袋を持って立っている涼太がいた。
涼太は持っていたコンビニ袋を床に置いた。
そしてしゃがみこんでいる俺と視線が合うように、涼太は床に膝をつけた。
俺は目線を合わせられなかった。
それでも、俺のことを包み込むような視線はしっかりと捉えられた。
強く否定したいのに、目から溢れる水滴が邪魔をする。
ギュゥッ
涼太は、強く優しく俺を抱き締めた。
涼太は、そういう考え方をする人だよね。
俺に裏切られていたのかもしれない…、ではなく、
自分が俺を締め付けていなのかもしれない、と考えるんだね。
どうして涼太が謝るんだよ。
ちゅっ
本当に、優しかった。
こんなにも透き通ったキスがあるものかと思った。
すぐに見えた涼太の表情も世界一、優しかった。
そして、少し悲しそうだった。
涼太は俺の頭を撫でた。
ギュウッッ
押し倒してしまいそうな勢いで、俺は涼太に抱きついた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。