「さて、行きますか。」
放課後、康輔の机にバンっと手を置く。
「ビビったぁ。
ちょい待って、あとこれだけしまっちゃうから。」
カバンのチャックを閉めてコートを着ると2人で教室を出た。
「あ、そーいや、佐伯は?」
「あー、なんか今日は用事あるって断られたわ。」
「あ、そーなの?
じゃあオレも今日じゃなくて大丈夫だけど?」
「んー…いや、行こ。
多分佐伯は建築関係の本買って欲しいって言うだろーし。」
アイツ、ゲームを控えたと思ったら就職のためにガチで勉強し始めてんだから。
あたしも見習わねーと…。
「そ。
じゃあ今日はデートだな!」
ん?
「で、でーとぉ!?」
あたしの叫び声にその場にいたみんなが一斉に振り向く。
「あほっ…」
はは、と康輔が笑う。
「だって!
康輔が変な事言うからじゃん!
絶対みんなに誤解された…」
康輔のファンクラブとやらからもなんか言われるかな…
めんどくせーことしちゃったなぁ。
「ま、オレは誤解されてもいいけどね。」
「へ。」
な、何言ってんだか…。
「んまぁ〜!!」
ストルーレはケーキ屋さんだけどイートインスペースもある。
あたしたちはケーキを買って席についた。
ん〜、ここのケーキは何回食べても美味しいなぁ〜!
特にこのチョコレートケーキ!
「あなたってほんと、なんでも美味しそーに食べるよな。」
「ほんとに美味しいんだよ!」
2個でも3個でも食べられる〜!
「康輔、ほんとにここで良かったのか?」
甘いものが苦手な康輔はティラミスを注文したけど、さっきから全然減ってない。
「え、全然いいよ。
てかオレが提案したんじゃん。」
「それはそうだけど…」
康輔、わざわざあたしが好きな店をチョイスしてくれたんじゃ…
お礼になってんのかこれ…
「ふっ」
笑みがこぼれる。
「なんだよ…」
怪訝そうな顔の康輔。
「んーん、なんでもない。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!