「ねぇー、待てよぉ」
2人のあとをとぼとぼついて行く。
なんでこんな寒いのにタイツなんだよ!
「ダメっ、男言葉禁止!」
「ほら、がに股で歩かないのー!」
「えー…
急にそんなの無理に決まってんだろー?」
「また出た!
だろー、はダメ!
でしょ?って言って?」
あたしがそんな言葉遣い…
違和感しかない!!
「じゃあまた部活でねっ!」
「お、う、うん…」
建築科と普通科の校舎は棟が違う。
部室からは建築科の方が近くてあたしは2人と別れて棟に入っていく。
絶対笑われる…!
あ、ラッキー。
階段を上がって教室前まで行くとドアが開いていた。
建築科の校舎は古くてドアの立て付けが悪く、開け閉めの度にすごい音が鳴る。
だから誰かが入るときは多少なりとも注目が集まる。
よし、こっそり入って何気なく席に着こ。
そーっと教室を除くと案の定、クラスメイトの1人、中山亮太と目が合ってしまった。
「あ、」
思わず声が漏れる。
「…あれ?
転校生?」
ん?
タタタッとあたしの元に駆け寄ってくる亮太。
て、転校生…?
まさか、あたし?
花園あなただってバレてないってこと!?
転校生、という言葉に反応したみんながこっちに目を向ける。
ひぃっ!
そんなに見んなよ!
「先生なら今いないよー…って、花園!?」
亮太の言葉にザワザワ、あちらこちらから聞こえてくる男子達の声。
「花園!?」
「え、別人…」
「なんか可愛くねぇ?」
かーっと体温が上がる。
「覚えとけよ、みっちゃん、遥っ…」
ボソッとこぼした独り言は周りのうるささでかき消された。
「えーあなた!
めっちゃいいじゃん!
可愛い!」
康輔が寄ってきて話しかける。
か、可愛い〜!?
「や、やりたくてやってる訳じゃねーんだよっ」
「照れるな照れるな、いやぁ、本当はさ、こーゆー女子が欲しかったわけですよ!」
…あのだから、みんなしてあたしのことディスってない?
「なんか女子なんだな、やっぱり!」
そう言って笑う康輔は私の頭をポンポンと撫でた。
「えっ…」
な、な、
いつもなら肩組んでくるのに…!
「な…んだよっ!」
バッと康輔の手を払い除ける。
ポカンとした康輔の顔。
そしてニヤッと笑って言った。
「あー、女の子の扱い受けるの慣れてないから照れた?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。