しるばーなside
チュンチュン…チュンチュン…
目が覚めると、知らない部屋のベッドで寝ていた
僕は仕事を失敗したんじゃなかったの?
それに……
家具がベッド以外何もない所を見ると…今までここは
使われてなかったんだろう
じゃあ、なおさら なんで僕ここにいるんだ…?
いや、今はそんなこと考えてる場合じゃない
窓の鍵は……よし、開いてる
ここから逃げよう
🪟カチャ、
窓を開けた瞬間、急に人が飛び出してきた
死神と一緒にいたヤツ…!
…なんとなく分かった
たぶん僕は気絶した後、コイツにさらわれたんだろう
そして今からされるのは間違いなく…
拷問だ
拷問で聞かれるのはたぶん…僕達一家の拠点
それを僕が言った時、コイツらは父さんと母さんの所を
襲撃しに行くだろう
それは避けなきゃ
父さんと母さんに迷惑はかけたくない
📄ピラッ
か、紙…?
…まぁ、読むだけならいいか
📄聖天は家族のご了解を得た上、霹靂隊の仲間として
協力していただくこととなりました。
ここに了承のサインをお願いします。
な、何これ…?
霹靂隊に入るってこと?僕が?
しかも"家族のご了解を得た上"って…!
どういうこと…ホントに、意味分かんない
違うよね?父さんと母さんが進んで、僕を霹靂隊に
入れたわけじゃないよね…?
🚪ガチャッ
死神…!
グイッ
紙を死神に見せながら、胸ぐらに力を込める
プルルルルルル、プルルルルルル、プルルルルルル…
電話の音が部屋に鳴り響いた。きっと死神のだろう
僕が胸ぐらを掴んでいるのに、彼は構わず電話に出た
父さんと母さんだ…!
パシッ
タッタッタッタッタッタッタッタッタ…!!!
タッタッタッタッタッタッタッタッタ…!!!
僕は急いで死神達から離れて、電話に耳を当てた
やっぱり父さんだ…!
父さんが黙ることなんて珍しくて、僕は首をかしげた
僕のせい?
それは…
初めて父さんの怒号を聞いた僕の体はわずかに震えた
連れてく…?
ドクンッと心臓が大きく脈打った
…この先は聞いちゃいけない。僕の本能がそう叫ぶ
僕は父さん達の息子じゃない…?
本当の両親は父さん達が殺した…?
ポロッ…
口からは何故か笑い声が出てきた
何も面白くない。何も楽しくなんてないのに
あっさりと言われてしまうその言葉
心がぐちゃぐちゃになった感覚がした
ピッ
体に力が入らなくて、壁によりかかった
こんなのってないよ……ねぇ、神様
こんな真実…僕は知りたくなんてなかった
こうなるんだったら…電話を奪わなきゃよかった
雫が零れないように、目元を手で隠した
ギュウッ
いきなり抱きしめられたことに驚いて声を出す
しばらくしてソイツは、優しく僕の頭を撫でた
……懐かしい
何が懐かしいかは分からない。でも自然とその言葉が
頭に浮かんだ
そっと、彼の背中を抱きしめる
死神が呼んでたから名前は分かってる
けど彼の口から、その名前を聞きたくなった
ギュッとより力を入れる
彼…まるぐりちゃんの体は優しい温かさだった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。