それは、テレサが多田と出会った日、れいん坊将軍のヒミツの抜け穴だと思って食い入るように見つめた、あの取水口を写した写真だった。
気付いた多田が
と言ってテレサを見る。
テレサは妙に嬉しくなる。
自分の記憶だけではなく、こうやって写真に残せるって、なんだかとっても素敵なことだ。そう思うと、いても立ってもいられなくなり、アレクに勢いよく語りかけた。
最後の方は少しトーンを落として、皆に聞こえないように注意しながらも、色んな事の一歩が踏み出せそうな予感でワクワクしながら、目を輝かせて話していた。
アレクは、テレサの気持ちはわかった気がしたが、ひたすら胡散臭く思える杉本や、最初からあまり良い印象を持っていない伊集院が部員という事がひっかかる。
そんな迷いを察したように、日向子が助け船を出した。
伊集院がアイコンタクトで「押して押して」と訴えると、杉本も頷いて、渋い声で言った。
と喜んで即答したテレサがアレクにも賛成してほしくて、必死な視線を向ける。
そんなテレサの子犬のような目を見ていると、アレクも反対できなくなり、渋々頷いた。
そう言って飛びつくテレサに、アレクはやれやれと苦笑するしかなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!