第25話

ありがとう
106
2024/03/11 16:17
11月、初冬







私はあれから
あんなに頻繁にいたベンチには行かなくなった

先生がいつ来てもいいように、常に座っていたあの場所



今まで放課後は私がだいたい居たからか

今では固定ではないがベンチに座る人がチラホラみえる



「なんか…私、もしかして今まで邪魔だったのかな?」

放課後、廊下の窓からみえるベンチ
今日はカップルと思わしき男女が一緒に座って
何やら話し込んでいる

「かもね。〇〇ちゃんが座らなくなった途端
割と人気になってない?」

ふふっと笑うジミン君とは相変わらず仲良くやってる




「そういえば、〇〇ちゃん文化祭の写真、現像しておいたよ!」

「あ、ありがとう。」



渡してくれた封筒
それは10月の中旬にあった文化祭の写真だった


ジミン君はどうやらカメラが好きみたいで
一眼レフを持って色んな人の写真を撮ってあげていた


私も何枚か撮ってもらっていて、現像してくれたみたい



「というか、本当に良かったの?」

「んー?何が?」

早速封筒から写真を出して1枚1枚確認しながら
適当な相槌を返す


「ユンギ先生と、写真撮らなくって」

その言葉に手が止まる


「…うん、いいの。今更じゃん、もう遅いの。」






あの日

文化祭の日



普段はスマートフォンが時間指定で禁止なうちの学校が唯一時間を気にせず使ってよくなる日


生徒同士はもちろん、先生とも写真を撮れる機会だ



色んな先生が写真を頼まれている中で
ユンギ先生も人気なわけで


生徒に囲まれて、写真を撮るユンギ先生を見た




撮ってあげようか?とジミン君が聞いてくれたけれど、どうしても勇気が出なくて

拒絶されるんじゃないかという不安が拭いきれなかった



そのまま避けるように反対方向に歩いた





消したかったし、消えたかった

私の視界からも、先生の視界からも











「え…これ、」

1番最後の写真


どこで撮ったんだろう


それは先生の横顔で



「たまたま!先生が1人でいてさ、被写体モデルお願いしちゃったんだよね〜」


なかなか良い写真でしょ?なんて自慢げ言うジミン君




写真の中の先生は木漏れ日を纏って
元々白い肌がもっと白くて、儚くて

教室のどこにでもあるベージュ色のカーテンが
より一層先生の上品さを引き立たせていて





良いなんてレベルのものじゃない

それは最高の写真だった




「凄い…。凄いよ、ジミン君!凄い綺麗!!」


あまりにも感動して、若干興奮気味。

「でしょ?だから勿体ないって。変に我慢するの」

「でも…やっぱり迷惑に、」

「だから!考えすぎだって!!写真を一緒に撮るくらい迷惑にならないし、なんなら皆撮ってたでしょ?」



分かってる


けど、やっぱり怖い




「大丈夫だよ。ユンギ先生なら」


「大丈夫…かな。」

「大丈夫。心が温かい人だって、〇〇ちゃんが
もしかしたら一番よく知ってるじゃない?」


うん、そうだね


私知ってる

先生がどれだけ素敵な人か
普通の生徒より知ってる


「…ありがとう」

ボソッと呟くように無意識にお礼が口から出た


するとジミン君は
「え?何が?何もしてないけど!じゃあちょっと他の人にも写真渡しに行かなきゃだからバイバイ!!」

そう言って廊下を小走りに去っていった


また、彼に救ってもらった

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