キーンコーンカーンコーン
放課後のチャイムが鳴る。
決戦だ。
作戦はあらかじめ、和人と雨音、莉乃に
教えてある。
まず、私と和人は帰ったふりをして教室から出る。
私と和人は、雨音と莉乃にアイコンタクトを
取ってから教室を出た。
廊下で俺は、渚に問いかけた。
今回の作戦は、渚が一人で実行するものだった。
「私だけで良い。」
「皆が傷付かなくても良いように。」
渚は、そう言った。
渚は震える声で、そう言った。
まるで、自分自身に言い聞かせるように。
そして、俺の目を真剣な眼差しで見つめて、
と言った。
俺は少しためらった後、ゆっくりと頷いた。
本当は嫌だ。
本当は、皆よりも先に渚を助けたい。
けどそれは、今の渚の顔を見て言えるのか?
俺には無理だ。
ガタン!
教室の中から机の倒れる音がした。
それと同時に、園風と美野木からメールが届く。
“始まった。”
渚はそれを見ると、俺に背を向けた。
俺がそう言うと、渚は黙って頷き、教室へ入って
いった。
始まった。
女王たちは私と和人がいなくなった瞬間、岸野さん
をいじめる。
だから、それを狙った。
真中はそう言いながら、少し後ずさった。
“雨音と莉乃が協力していることがバレていない”
ことがね。
岸野さんは目に涙を浮かべていた。
私はそう言いながら、岸野さんへ歩み寄り
涙を拭う。
相当、怖かったのだろうか。
岸野さんは大量の涙を流した。
私は、そんな岸野さんをぎゅっと抱き締める。
そう、一言岸野さんに伝えてから立ち上がった。
そして、女王を睨む。
その通りです。
私はそんな意味を込めて、微笑んだ。
その笑顔はきっと、周りからしたら
怖かったと思う。
「何でこんな時に笑っていられるんだ」と。
違うんだ。
こんな時だからこそ、笑ってるんだ。
自分の、大きな恐怖を押し殺す為に。
女王はそう言って、必死で私を引き下がらせ
ようとした。
しかし、それが裏目に出た。
クラスがざわつき始める。
「葉連暮斗の事故は女王が引き
起こしたのではないか」と。
女王は怒鳴った。
あーあ。言っちゃった。
クラスメイトは口々に女王の悪口を言う。
人って、本当に汚れてるよね。
今まで怖くて何も出来なかったのに、その人に
危機が訪れると何でも出来てしまう。
本当、汚い。
女王は顔を真っ赤にした。
さぁ、女王様。
あなたの椅子を、私にくださいな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!