【 あなたの名字 あなたの下の名前 side 】
〜10分後〜
1人小声で呟く。
ちらっと顔を上げると、資料を渡そうとしていたらん先輩の姿がない。
奥のソファでは紫崎先輩と……暇くんが、話してる。
どうしよう、気まずい。
でもこの資料を渡さないと帰れないし…
らん先輩の机に置いておこうかな、いやでもこれは大事な資料だし。
私はがたんと席から立ち上がり、ソファの方へ向かう。
すると物音に気づいた紫崎先輩がこちらを向く。
それと同時に、彼と話していた暇くんも、こちらを見る。
うぅ……気まずい。
私が躊躇っていると、紫崎先輩が声をかけてくれた。
神様じゃん…
そう言って紫崎先輩に資料を差し出す。
正直紫崎先輩と個人で話したことはあまりないから少し怖い。
まぁ、めっちゃ真面目でいい人なんだけどね。
私の資料にひたすら目を通す紫崎先輩。
紫崎先輩は普通にイケメンだから、この様子も映える。
私がつい見とれていると、紫崎先輩は資料から顔を上げた。
ついオドオドしながらお礼を言うと、紫崎先輩はソファから立ち上がって―
突然私の頭を撫でてきた。
おそらく今私は真っ赤だ。
触らなくてもわかるくらい頬が熱い。
紫崎先輩はハッとしたように私から手を退け、目を逸らす。
慌てて私は自分の席に置いていた荷物をまとめる。
生徒会室を出ようとしたところで―
急な名前呼びに驚いた。
それで慌てて私も名前呼びしちゃったし!?
しかも暇くんがいたこと忘れてた……!!
急いで生徒会室から出る。
生徒会室を出たら、廊下を全力疾走。
考えながら帰路についた。
Next …
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!