第4話

ってことで
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2023/12/31 16:44
七瀬ハク
七瀬ハク
家、帰ろっかぁ…。
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
寒くないか?
風邪ひくなよ?
七瀬ハク
七瀬ハク
だ、大丈夫です。
なんだかんだ心配してくれる兄さんは、そこらの悪霊とは違い優しい。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
にしても頼まれたのに何もしないで帰るなんてナンセンスじゃない?
うちらのプライドにかけても、約束はちゃんと守りたいって思う。
七瀬ハク
七瀬ハク
たしかにそうだね。
一度その悪霊たちの分霊を見て帰ろうか。
パシリくん
パシリくん
わっ、わかりましたぁ!
ただでさえ不気味な家に、足を踏み入れる。
(いくら悪霊が小さい頃から見えるからといって、なんでもかんでも怖くないってわけじゃないんです)

きしり、と嫌な音が鳴って、パシリくんは息を呑む。
千魂華厳自刃童子
いらっしゃい
パシリくん
パシリくん
!?
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
おまえ…悪霊?
千魂華厳自刃童子
人聞きが悪いわよ、そんな大嘘、誰から聞いたの?
医者のお姉さん
医者のお姉さん
いや、悪霊だなんてあのロリ言ってなかったよ。
……確かに。
分霊を置いておくとは言っていたけど、悪霊だとは限らない。
あんなに禍々しい霊を持っていたら、そう勘違いするのも無理はないと思うけど、この女の子には申し訳ない勘違いをしてしまった。
七瀬ハク
七瀬ハク
ごめんなさい、あのっ、女の子にこのお家の管理を任されたんです、これからよろしくお願いします。
千魂華厳自刃童子
話は盗み聞きしてた。
よろしくね。
パシリくん
パシリくん
よろしくです!
魄啜繚乱弟切花魁
抜け駆けなんてよくないね、あたしの獲物だよ
七瀬ハク
七瀬ハク
!?!?
あ、あの僕っ、タマシイが薄いみたいなので食べてもおいしくないですよ…?
千魂華厳自刃童子
新しくこの家を管理してくれる人なの。
もう少し敬意を持って接するべきだと思うよ。
魄啜繚乱弟切花魁
へぇ。そうやって純愛守り抜いてもいいことないわよ?
千魂華厳自刃童子
ねぇちょっと…!
私がどんな霊か知って言ってるの?
知ってて言ってるんだったら趣味悪いわよ?
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
喧嘩すんなよ…めんどくさい…
パシリくん
パシリくん
白衣のひとと、花魁さんは仲が良くない…と、めもめも…。
混沌が訪れてる…。
七瀬ハク
七瀬ハク
仲良くとは言いませんが、喧嘩は良くないと思いますよ。
あと聞きたいんですけど、他の霊っていますか?
二人はギリギリと取っ組み合いを始めていて、収拾がつきそうにない。
千魂華厳自刃童子
いるよ…!
男の子と、武士!それに僧や変人も!
魄啜繚乱弟切花魁
痛いじゃないかい…!
あ、こらっ、蹴るんじゃないよ!
痣ができて傷ものになったらどう責任取ってくれるんだい!
千魂華厳自刃童子
知らない!
というかあなたは今お客なんていないんだからいいじゃない!
医者のお姉さん
医者のお姉さん
…先に他、行こうか。
千魂華厳自刃童子
そのほうがいいと思う!
魄啜繚乱弟切花魁
あっ、ちょっと待ちな!
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
なんだ、何か用か?
兄さんが足を止める。
流石に待って、という声は僕もスルーしづらく、話を聞こうという流れになりかけたその時。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
勇者くん、そこは任せた。
お姉さんはきりがないと感じたのか、兄さんにすべてを託して他の部屋へと僕らは向かった。
パシリくん
パシリくん
あの人達を兄さんが対応って大丈夫ですかね…。
七瀬ハク
七瀬ハク
兄さんは女性には甘いから、振り回されて帰るときにはゲッソリしてるだろうね。
月蝕尽絶黒阿修羅
だれ?
パシリくんと話しながら話していると、曲がり角からすっと男の子が出てくる。
パシリくん
パシリくん
あっ、あっ…。
ぼ、僕たち、今日からここを管理するんだ…。
よ、よろしく…ね?
月蝕尽絶黒阿修羅
おかあさん?
僅かながら、男の子から悪霊の雰囲気を感じ取る。
話が通じないのかもしれない。
パシリくん
パシリくん
僕…、君のお母さんじゃないです。
月蝕尽絶黒阿修羅
おかあさんじゃ…ない?
おかあさんに、見える…。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
……?
精神病?
七瀬ハク
七瀬ハク
そんなこと本人の前で言っちゃ駄目だよ、姉さん。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
いやだってほら、勇者くんの病院で一時期勉強してたけど、どう考えてもこれって…。
パシリくん
パシリくん
…!
僕、君のお母さんじゃないよ。
僕は自分でパシリくんはって言うから、パシリくんっていう人がいたら僕だと思って。
月蝕尽絶黒阿修羅
……?
パシリくん
パシリくん
パシリくんは、君のお母さんじゃないよ。
月蝕尽絶黒阿修羅
……うん。
パシリくんは、自分と他との見分け方の違いを男の子に教える。
七瀬ハク
七瀬ハク
ぼっ、僕は、ハクです!
ハクは、ハク…。
月蝕尽絶黒阿修羅
…?うん。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
私は姉さん!
姉さんって呼んでね。
月蝕尽絶黒阿修羅
…う、うん。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
下に勇者もいるよ。
月蝕尽絶黒阿修羅
…そんなに覚えられない。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
大丈夫!
姉さんたちはまた近いうちにくる!
君が姉さんたちのこと忘れないようにするよ!
月蝕尽絶黒阿修羅
……うん。
パシリくん
パシリくん
姉さん、楽しそうですね、ハク様。
七瀬ハク
七瀬ハク
…そうだねぇ。
パシリくん
パシリくん
僕たち、先に行ってましょうか。
七瀬ハク
七瀬ハク
…のほうがいいかもね。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
あっ、うん!姉さんはまだこの子と遊んでる!
あとは武士と僧と変人がいるんだったよね!そっちはよろしくね!
七瀬ハク
七瀬ハク
はぁい…。







七瀬ハク
七瀬ハク
…2階に来たけど、何もないね。
パシリくん
パシリくん
本当にまだいるんですかね?
殉國禁獄鬼軍曹
殺してくれ…。
低くて男らしい声が、奥から聞こえる…。
七瀬ハク
七瀬ハク
あっ、あの…、僕ら、今日からこの家の管理人をするんですけど。
殉國禁獄鬼軍曹
…そうか。
パシリくん
パシリくん
反応、薄いですね。
七瀬ハク
七瀬ハク
うん。
七瀬ハク
七瀬ハク
…なっ、仲良く…して、いただけ、ませんか?
殉國禁獄鬼軍曹
…殺してくれ。
パシリくん
パシリくん
僕には…そんなこと、できません…。
殉國禁獄鬼軍曹
俺を、殺してくれと、言っている…。
七瀬ハク
七瀬ハク
……また今度来ます。
その時にお話を伺いますね。
殉國禁獄鬼軍曹
…あぁ。いくらでも来るといい。
パシリくん
パシリくん
僕ら、全員にお話を伺いたいんですけど、あと他の人ってどこにいるか分かりますか?
殉國禁獄鬼軍曹
やめておけ。あいつらは話が通じる人間ではない。
パシリくん
パシリくん
そうですか…。
しんみりとした感じに襲われて、自然と従いたくなるオーラを持っている。
七瀬ハク
七瀬ハク
じゃあ、帰りますね。
殉國禁獄鬼軍曹
そうするといい。











七瀬ハク
七瀬ハク
姉さん、帰りましょ。
挨拶は終わりました。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
う~ん、姉さんまだこの男の子と遊びたい♡
先にお家に帰ってて♡
パシリくん
パシリくん
駄目ですよ~、ハク様をお守りしないと!
ハク様が敵組織にやられちゃってもいいんですか?
医者のお姉さん
医者のお姉さん
そっ、それはちょっと困る!
パシリくん
パシリくん
ですよね、兄さん回収して早いところ撤収しましょう
七瀬ハク
七瀬ハク
ありがとうございます姉さん、いつも守ってくれて。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
いやいや~、姉さんの仕事は人の命を守ることだから、まっかせといてよ!
パシリくん
パシリくん
兄さん、帰りますよ~
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
あ、ああ。
魄啜繚乱弟切花魁
この男はもらったからね!
千魂華厳自刃童子
本人が肯定していないんだからそんなの許されるわけないの!
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
いや俺は別に勇者としての宿命を果たせれば他はどうでもいいが。
千魂華厳自刃童子
少しは否定してよっ!
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
じゃあ否定しておく。
医者のお姉さん
医者のお姉さん
贅沢だね、勇者くんは美女二人に囲まれて…。
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
贅沢なのか…?
パシリくん
パシリくん
これがムジカクケイってやつですかね。
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
おっ、なろう系みたいだなそれ!
医者のお姉さん
医者のお姉さん
ってことで勇者様はパーティにお戻りになられないと。
サブクエストは達成しましたから。
勇者のお兄さん
勇者のお兄さん
了解した。
千魂華厳自刃童子
あっ、ちょっと!
まだ話は終わってないんだって!
魄啜繚乱弟切花魁
そうだよ!
七瀬ハク
七瀬ハク
また今度来ますから…。
こうして、てんやわんやな受胎告知の家の訪問は終了した。
その後、一週間に一度でいいと言われた管理だが、僕たちは仲良くなった霊たちと交流するため、毎日のように通うことになるのだった。

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