第4話

【 深夜零時、あの海岸で 】
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2024/05/02 06:36

リクエストありがとう!

※死ネタ注意
苦手な方多いかもです
ただ頑張ってるので読んで欲しい

桃視点


この世界はつまらない事ばっかりだ。

何だ急にって思う人も居るだろうけど、そう感じることってあるでしょ?

少なくとも俺は常に思ってる。
楽しそうに笑ってる人を見ると嫌気がさす。
俺の世界は真っ暗闇だっていうのに。

だから、いっつも夜な夜な散歩をしてる。
仲間に会えたりしないかな〜なんて思ってたり。
りうら
こんばんはっ
ないこ
ぇ、あ… 誰、ですか
りうら
ん〜…りうら、かな
ないこ
…どうも
りうら
君は?
ないこ
あー…
仲間に会えたり、とか呑気なことを考えてたけど、いざ誰かに話しかけられると話は別だ。
そもそも、一体何なんだこの人は。
すごく不思議な感じがする。
不気味に笑ってて、ミステリアスというか。普通の人間と少し違うような感じ。
ないこ
内藤ないこ、です
りうら
じゃあないくんって呼ぼうかな!
ないこ
はぁ…
りうら
りうらの事は好きに呼んでくれていいからね
一人称りうらなんだ。
なんか見た目に反して子供っぽいのかな。
りうら
まぁそんな固くならないでよ
りうら
どうせ一夜限りの仲だし
ないこ
……なんで、こんな時間に?
りうら
ん〜そういう気分?
りうら
ないくんもそうでしょ?
ないこ
まぁ、そうですね
りうら
敬語外そうよ!
りうら
見た感じないくんの方が歳上じゃん?
ないこ
え、幾つなの
りうら
まだ16だよ?
ないこ
まじか、高校生なのか
ないこ
え、補導とかされないの?
りうら
ん?さっきされたよ
ないこ
え…
何この子。ほんとに意味分かんない。
子供っぽい割にホストみたいな顔してるしさ。
補導とかされて当たり前みたいな反応してさ。
不思議にも程がある。
りうら
まぁすぐ帰りまーすって言っておけば大丈夫だし
ないこ
えぇ…
りうら
ねえ、堤防のぼろうよ
ないこ
別にいいけど
りうら
じゃあはやく行こっ!
ないこ
あっ、ちょっと!
なんの躊躇いも無く俺の手を掴んで走り出した。
前を走るその背中が、どこか寂しく感じて。
顔は笑っているけれど、孤独に溺れて、誰にも期待をしていないような感じ。

もしかして、俺と一緒なのかな。
だから話しかけてくれたのかな。

そう思った瞬間、りうらを守ってあげたくなって、前を走るりうらの手をぎゅっと強く掴んでみる。
すると、りうらは走る足を止めた。
ないこ
…どしたの?
りうら
……ううん!
りうら
なんでもない!
ないこ
それが一番気になるんだよバカタレが
りうら
なっ!なにそれ〜!
ないこ
あははっ
何が面白いのか分からないけど、とにかく楽しくて。
今度は俺がりうらの前を走ろうと思ったのだが、りうらは目を見開いて再び足を止めた。
ないこ
え、なに
りうら
…なんでないくんが先走るの
ないこ
え?
りうら
…ッ置いて行かないでよっ 、!!
りうらはそう言って泣き叫んだ。
大きな目から、大粒の涙を零しながら。

俺は訳が分からなくて硬直してしまった。
ないこ
え、…手繋いでるじゃん
りうら
違うッ 、違う …っ!!
ひたすら考えて出た言葉はそれだけだったけれど、りうらは必死に何かを否定した。

俺は訳が分からなかったけれど、なんとなく、りうらが落ち着く方法はこれじゃないかと思いついた。

繋いでいた手を一旦離して、腕を広げて声をかける。
ないこ
……おいで
りうら
っえ、… ?
ないこ
ん、おいで
りうら
ぅん、っ…
りうらは素直に俺の腕の中に収まった。
思いのほか細くて華奢な体を、包み込むように抱きしめる。

春だけど、りうらの体は氷のように冷えきっていた。
いや、心が冷えきっていた、という方が正しいかもしれない。
人間の温もりを感じなかったから。
しばらくすると、りうらは泣き止んだ。
そのタイミングで声をかける。
ないこ
それじゃあ、一緒に行こっか
りうら
ん、いく
もう一度手を繋いで、横並びで堤防に向かった。

堤防に着いて、上に登ってみる。
すると、海は星の光を反射してキラキラと光っていた。
りうら
やっぱ綺麗だなぁ…
ないこ
ね、俺こんなとこ初めて来た
りうら
そうなの?
ないこ
うん
ないこ
いつも住宅街ばっか散歩してたから
りうら
まぁ、りうらもそうだったよ
りうら
たまたま見つけただけ
ないこ
なんか俺ら似てるね
りうら
たしかにw
ないこ
今までなんで会わなかったのか不思議
りうら
堤防に腰掛けながら、他愛もない話をしていた。

ふと、俺はある事が気になった。
ないこ
そういえば、前になんかあったの?
りうら
え、なにが?
ないこ
いや…俺が前走っただけで泣いてた、から
りうら
あぁ〜、あれね
りうら
……教えなきゃ、だめ?
ないこ
あ、いや…言いたくないならいいけど…
ないこ
ちょっと気になって
りうら
ごめんね、話すと…思い出しちゃうからw
りうらは、儚げに笑った。
触れたら消えてしまいそうなくらい、細い蜘蛛の糸で繋がれたような意思の弱さだった。
自虐をしているような笑顔で、見ていると苦しくなってしまいそうだった。
ないこ
りうらってさ、好きなこととかあるの?
りうら
好きなことかぁ…
りうら
歌、とか?
ないこ
歌?
りうら
うん
ないこ
ちょっと歌ってみてよ
りうら
えぇ〜
ないこ
気になる気になる
りうら
リクエストは?
ないこ
ん〜
ないこ
りうらの声的に、夜撫でるメノウとか
りうら
めっちゃいいじゃん!
りうら
じゃあいきます…!
りうらはそう言って、指パッチンを三回してから歌い出した。


終電はもう無いよ。
これからどうしようかなんて、迷い込みたいな二人で。


そんな歌詞から始まる、俺の大好きな歌。
りうらが歌い出した瞬間、言葉を失った。
爽やかで、イケボで、当たり前のように上手くて。
嫌なことを全部忘れられるくらい、俺はりうらの歌声に惚れ込んでしまっていた。
りうら
ん!おわり!
ないこ
……………
りうら
ないくん?
ないこ
……………
りうら
ないくーん?
ないこ
あっ、…ぇと … 、なに?
りうら
何じゃないよ
りうら
おわったってば
ないこ
あぁ…そっか
ないこ
もう終わりか
りうら
気づかなかったの?
ないこ
うん、なんかね
りうら
なにそれw
りうらの声があまりに綺麗で、一番で終わりだったはずなのに、聞こえていないはずのその先が頭の中で響いていて。
夢のような時間は、一瞬にして散っていってしまった。
初兎
おーい!!りうらー!!!
りうら
ぁ、見つかっちゃった…
ないこ
え?
りうら
俺施設の孤児なんだよね、w
ないこ
え、?
初兎
また施設抜け出して!
初兎
あかんやろ!?
りうら
ごめんなさぁい
初兎
いつもそう言うけどなぁ!反省してないやん!
りうら
してるもん
初兎
明日からは外出禁止な!外行く場合は俺かまろちゃんと一緒に!
初兎
いいな!?
りうら
やだ
初兎
そんなん言ったってお前…!
いふ
初兎!!もうええ
いふ
説教は施設ですればええ
りうら
……………
何が起きてるか分からない。

りうらは施設の孤児で、本来出かけちゃいけない時間に夜道をふらふらしている。
それで何度も怒られた。

今の所こんな感じであってるのだろうか。


りうらの表情が暗いことくらいは分かる。
さっきまでのヘラっとした態度や表情が、一瞬にして無くなった。
ないこ
ぁ、あのっ…
初兎
なんや君
初兎
はよ家帰らな
ないこ
わ、分かってます… 、けど
初兎
けど?
ないこ
ちょっとだけ、りうらと話をさせてください
いふ
なんで?
ないこ
ほんとに一瞬だけでいいので
りうら
ないくん……
初兎
あかん
いふ
いや、ええよ
初兎
まろちゃッ 、!
いふ
りうらに負担はかけたらあかんってあにきも言っとったやろ
初兎
でも…
いふ
この人はきっと、りうらの良き理解者や
初兎
……………
俺とりうらの会話を許そうとしない白髪の男性を、少し大人な青髪の高身長の男性が引き止める。

その二人はきっと俺よりもずっとりうらの事を知っているはず。
それなのに、どうして俺がりうらの良き理解者って思うんだろう。
きっと二人の方がりうらを理解しているだろうに。


許可を得たりうらが、少しずつ俺の方に歩いてくる。
試しに腕を広げてみると、さっきと同じように吸い込まれるようにして俺の腕の中にすっぽりと収まった。
初兎
ぇ、?
いふ
うそやろ…
ないこ
りうら
用件は?
ないこ
あぁ、ごめん
ないこ
明日、深夜零時、ここ集合ね
りうら
りうら
でも…
ないこ
静かに
りうら
ん、…
ないこ
一緒にここから飛び降りるの、いい?
りうら
っ 、!
りうら
ほんと?
ないこ
うん
りうら
へへ、ありがとっ!
ないこ
ん、またね、りうら
りうら
うん!またねっ!
最期に見たりうらの顔は、満開の夜桜のように、美しく咲いていた。


めっちゃ長いめっちゃ長い
まだ書きたいから一旦切ります
出来れば続き今日中に出したい

是非とも考察とかしてみてねん
色々散りばめといたから

スクロールお疲れ様でした

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