第96話

3話
704
2023/06/15 08:03
太宰治
探偵社を辞めてほしい。
あなた
…え?

治くんは何の前置きもなく、そう言った。

私は驚きのあまり、声が出せなかった。
どうして、なんでそんなことを言い出したのか
意味が判らなくて。
あなた
え…あ…え……?
な…どうし……て…
はっきり言ってとても辛かった。
長い間ずっと治くんと居て、
治くんと一緒に仕事をしてきた。
その日々が愛おしくて、素敵で。


なのに___
あなた
治くんは違ったの…?
太宰治
あなた
治くんは私と働くの嫌いなの…?
太宰治
それは違う…!
私あなたと働くのが楽しくて好きだ。

太宰治
ただ……

治くんは何故か、悲しそうな顔をしていた。
太宰治
怖いのさ。
探偵社は危険が伴う。

太宰治
あなたは何時も無茶をして、


太宰治
し、あなたを失ったらと思うと怖くて夜も眠ることが出来ない。
太宰治
だから、あなたは探偵社から離れてほしい。安全に暮らしてほしい、私の側で。

太宰治
そうだ!あなたは何もしなくても構わない。私に任せてくれたまえ。
名案だろう?
太宰治
あなたが私の側で笑っていてくれれば、
私はこの上ない幸せ者なのだよ。

治くんはそのあとも
同じようなことをペラペラと続けた。


でもさ、そんなの…
あなた
そんなの、恋人じゃないよ。
私は今にでも
目から溢れ落ちてしまいそうな涙を我慢していた。
あなた
…ごめん、一寸ちょっと1人にさせて。



私は治くんを背にして玄関へ向かった。
太宰治
…ッ!!あなた!待ってくれ!


治くんが呼び止めていることも構わず、ただ治くんに捕まらないように、逃げるように玄関から出た。

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