第97話

4話
700
2023/06/16 08:11
何処か行く場所があるわけでもなくひたすら歩いた。
あなた
ハァハァ…

どうしてだろう、足に力が入らない。
あなた
痛ッ!!

焦って慣れない靴を履いてしまった為に
かかとを靴擦れしてしまった。


どうしてこうなってしまったのだろう。
そんなことをひたすら考えていた。
確かに最近、私は焦っていた気がする。
治くんのために、私が出来ることはないのかって。
治くんに喜んでほしくて。


ポタポタ
あなた
あぁ…雨だ。
雨は無慈悲にだんだんと大きな音を立てて降り始めた。私は傘を用意している筈もなく、
少し濡れてしまった。


雨とは別の濡れた原因に目を背けながら。


家に帰る気にもなれなかった。

私は少し落ち着くために
雨宿りをすることにした。
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あなた
雨、止まないなぁ…

雨は先程よりどしゃ降りとなっていった。



これからどうしようか、
そんなことを考えていた時だった。
中原中也
何しけたツラしてンだ。


あなた
ちゅ…中也…くん



あなた
どうして此処に?
中原中也
可愛いお姫様を見つけたンだ。
声かけねェ訳にはいかないだろ?


そう言って中也くんは私に優しく笑いかけた。
そんな些細なことが嬉しくて
目から涙が溢れてしまいそうだ。
中原中也
どうしたンだ?
あなた
いや、何でもない。
私は中也くんから逃げるようにまだ雨の止んでいない外を歩きだそうとした。
中也くんに心配かけたくない。
誰かに心配をかけると迷惑になってしまう。
中原中也
待て、あなた。
中也くんは私の腕を掴んできた。
あまりの突然の出来事に躰が固まる。
中原中也
俺に話してみろ。
中原中也
心配かけたって構わねェ。だから
中原中也
言ってみろ。

あなた
中也くん……






実はね___

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