第98話

5話
698
2023/06/17 08:03
あなた
__ってことがあって。
あなた
私…どうしたら良いのか
判らなくって……
また、頬に涙がつたりそうになる。
もしかしたら雨で洗い流されてくれないだろうか。




一方、中也くんは私の話を親身になって
聞いてくれて、ゆっくりと頷いた。


中原中也
あー成る程な。
あなた
あ、ごめ…
こんなこと相談しちゃって
中原中也
いや俺が言ったんだ。
気にすんな。
あなた
あ…うん…ありがと
中也くんの優しさに嬉しい反面、
胸が苦しくなる。

とても辛くて、切なくて。


中原中也
不器用すぎんだろ…
あなた
え…?
中原中也
あなた、俺からの助言だ。
中原中也
青鯖があなたを大切に
思っていることは事実だ。
あなた
それは判っている筈なんだけど…

あなた
でも私だって治くんの役に立ちたいって
中原中也
だったらその気持ちを
太宰に直接伝えてみろ。
でなきゃ話しは始まらねェ。


中原中也
……出来るか?
あなた
う…ん……わかんない
自分でも気持ちを上手く言葉に出来ないのに…

治くんと直接話そうとしたら
頭が真っ白になりそうだ。
中原中也
まァ心配要らねェよ。
中原中也
あなたなら出来る。
 
あなた
…!


あなた
…うん。ありがと。


中原中也
お!あなた、空見てみろ
あなた
あ…!雨止んだ!

空を覆い尽くしていた雲の隙間から
光が差し込み始める。

暖かく眩しい光が顔を出す。



あなた
じゃあ、私、行ってくる
中原中也
おう!
あなた
またね!

そう言って私は中也くんに手を振りながら進んだ。

治くんが居るであろう私達の新居へ帰った。



鍵を忘れてしまった為、
玄関の扉で治くんに声をかけた。
あなた
治くん!居る?

あなた
…その、先刻さっきはごめんね。
あなた
会って話がしたい。









あなた
治くん?
いくら声をかけても
中から声が聞こえないことに違和感を覚える。

仕方がなく私はドアノブに手を掛けた。
あなた
あれ?鍵開いてる…
あなた
治くん…私のために開けたまんまにしてくれたのかな…
私は家に入って治くんを探した。





だけど、そのとき、治くんは家には居なかった。

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