第34話

先輩、答え合わせしましょう
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2023/03/26 00:00


side 那須


言った、言ってしまった。

藤井くんは瞬きを数回してから、微動だにしなくない。


『……先輩、?』

「…それ、は、恋愛的……な?」

『…っ、……………はい。』


しっかり藤井くんの目を合わせて言いたいのに、藤井くんは目を合わせてくれない。

藤井くんはキュッと唇を噛んだ。

答えを探しているんだろうか。


この関係が変わるのも、俺との距離が縮まるのも、藤井くんにとっては辛いのはわかっていた。

こんなの、自分勝手なだけだ。

苦しくて、合わなかった目を自分も逸らした。


「返事は、今じゃなくてもいい?…しっかり、答えを出したい。」

『…はい、』


チャイムが鳴るのと同時に、藤井くんは立ち上がる。

俺は校舎裏に取り残されたまま、ただのその背中を見つめていた。


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帰りの号令がかかった。

それが終わると同時に、みんなが思うように話し始める。

突然、教室の後ろから声をかけられた。


「なす、」

『えっ、!あ、藤井くん……!?』

「だから先輩ってよべよぉ〜…」


ギリギリ教室に入らない位置で、壁にもたれながら藤井くんが俺に言う。

今日告ったのに。いつもの調子で話しかけてくれるから、優しい人だなと再確認させられた。


『すいませんっ………っていうか、なんでここに?』

「…いや、一緒に帰ろうと思って」

『え、先輩と俺家逆方面……』

「いーから、早く片付けてきて!」

『あっ、はい!』


カバンに急いで教科書とかを詰め込む。

ちらりと前を見ると、龍我と浮所と大昇がニヤつきながらこちらを見ていた。

……お前らが思ってるほど上手くいってないぞ、俺。


カバンを雑に背負って廊下に出ると、藤井くんに腕を引っ張られる。


『えっ…ちょ、先輩?どこいくんすか!?』

「………」


聞いても何も答えない。

俺は藤井くんに手を引かれるまま、連れてこられたのはこの前4人で来たスタバだった。


「ここ、2年生の範囲だと思うんだけどさ。コレであってる?」


席に着くなり問題集を開き、藤井くんが言う。

状況がよく飲み込めてないまま、俺はとりあえずその問題と向き合う。

俺が軽く説明すると、藤井くんはすぐ納得したような顔でシャーペンを走らせた。

時々問題集とにらめっこして、問題が解けるとぱっと顔を明るくさせる。


すきだなぁ、と思いつつ俺も自分の勉強を始めた。


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『すみません、こないだも奢ってもらったのに』

「ん、いーよいーよ。俺が勝手に頼んじゃったんだし」


帰り道、風が冷たい。

空は赤と青の混ざった色をしていて、なんだか少し寂しい。


「あの、さ。」


隣で藤井くんが少し寂しい顔で言う。



「ごめんけど、やっぱり今のままじゃ俺は那須の気持ちにちゃんと答えられない。」



嫌という程わかっていた答えが、藤井くんの口から零れた。


「でもさ、」



顔をあげた。

今まで合わなかった目が、合った。



「______おれ、那須の気持ちに答えたい。」



「まだ、好き〜とか、付き合うとかはわかんないけど。」








「距離は縮めてみたいって、おもった。」







目をしっかり見て藤井くんが言う。

心臓がバクバクなって、体全身が熱くなって、風の冷たさなんてどこかに吹き飛んでしまった。



「……卒業までに、答え出すから」


『…いいですよ、藤井くんのペースで。』



藤井くんの手が触れる。冷たくて、見ると赤く染っていた。

俺は藤井くんの手を包み込んで、言った。









『___俺は、いつまででも待ちますから。』





たとえ距離を縮めるのに時間がかかっても、俺はこの手を離したくないと思った。


作者です。

第2シーズンふじなす、終了致しました。

次はみんな大好きかなりゅです🙌🏻

お楽しみに……🙇🏻
次作のアンケート取ってます

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