壬氏side
聞いたこともない諺だったが、薬屋の顔色が一気に変わったのを見て、気づいてしまった。
『猫』とは、もしかして、薬屋のことを言っているのか?!
……だとしたら、暗に『これ以上介入したら命の保証はない』と脅されていることになる。
薬屋はまだ名を教えていなかったはずだ。
なのに、何故…?!何故知っている?!
言い争っていると、薬屋が私の肩に手を置き、宥めるような仕草をした。
そう言うと、少年と向き合って軽く頭を下げた。
「 貴方の『ソレ』は
妖術という認識でよろしいですか? 」
少年は困ったように眉を下げて、視線を彷徨わせながら首に手をやっていたが、やがて小さくコクンと頷いた。
それを目視した薬屋は、そうですか、と独り言のように呟き、大きく溜息を吐くと、私を振り返った。
私たちは『また来ます』とだけ言い残し、少年の家を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。