夜。
一応アイツにも言っておくか。
アイツのことだし、みんながいなくても
『十二支巡り』はすることになると思う
けど、今まで反発してきたから
言っておこう。…怪しまれないといいな…
ふすまに向かって声をかける。
満面の笑みで。
そうしないと怒られるから。
ドアを開ける。
お酒とタバコの匂いが充満している。
父が、お酒に酔って赤くなった顔で言う。
返事は適当だ。相手を怒らせないという ところにだけは気をつけるが。
『十二支巡り』は大体の巫女が亡くなる。私は2人が守ってくれるので多分死なないが、父には伝えていない。
つまり、アイツは我が子が死にに行くことを喜んでいる。
…イカれてるな。
そう、早い方がいい。
父はそう思うに決まっている。
コロネたちも早い方が良いと言っていた。
私にも都合が良い。
家から抜け出せるから。
断ってはいけない。
日程が明日からで良かった。
これで早く行ける。
ふすまを閉める。
アイツの機嫌が良くて良かった。
機嫌が悪かったら、何でもっと早く決めなかったんだと怒られてしまうだろう。
怪しまれるかと思ったけれど、お酒が回っていたのか、怪しまれなかった。
…良かった〜。
廊下を歩いていく。
父側の使用人に気づかれたら
真面目に終わるんだけど…
って、私が終わるんだけど!
…今、また『明日』とは、言ってなかった。どういうことだろう?
1159文字です!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。