「孤児院です。」
そう云った彼女はすぐさま駆けていった。
なるほど、子供達は孤児院の方角に逃がしたのか。
まあ、そこで子供達がどうなっていようとこちらがそれを実行した訳ではないので、どうでも良いと云えばどうでも良いのだが。
(あちら側に寝返られるとな…)
当然彼女一人殺すことなど造作もない。
今回の目的は組織の殲滅だ。
長の爺と一緒に殺してしまえば問題ない。
問題ないはずなのだが…
(彼女を引き入れればその貢献は絶大なものだろう)
ここは引き入れておかないと後で森さんや他のまあまあ見る目がある構成員に怒られるだろう。
そうなったら森さんに睡眠薬をもらえなくなってしまう。
殺したくはない。
あとは…
彼女が笑った時の悪戯が成功した時のような表情を思い出す。
..................。
ここで考えていても時間の無駄だ。
まず彼女があちら側につくかどうかも決まった事ではない。
とりあえずここは追いかけるのが先決だろう。
彼女を見失わないようにして追いかける。
孤児院への道のりは当然把握しているが、いま彼女が通っている道が一番の近道だろう。
何度目かの角を曲がり、通路を一気に駆ける彼女を追う。
見ていると彼女は立ち尽くしているようだった。
(不味い)
少女からの殺気が離れていても判る。
まだ今は爺に対する怒りだが、洗脳されてしまうと敵対するかもしれない。
「待て!一旦止まれ!」
そう叫ぶが彼女はゆらりと動いて孤児院の扉を一人で開けてしまった。
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目の前のクソジジイは笑っている。
しかもその眼には同情が含まれていた。
頭がカッと沸騰する。
拾っておいたナイフを突きつける。
此奴、私の仲間達、いや、妹達を殺したくせに。
「何を、笑って、いる」
爺は表情を変えない。
「何が可笑しい!!私の妹達を…」
いや、待て。落ち着け。冷静になれ。
感情のままに行動するな。理性を引っ張り出せ。
お姉ちゃんの教えだろう。
観察と分析が大事だと云っていただろう。
少しだけ落ち着かせて爺を見る。
この爺は何も持っていない。
今までやってきた事の経験の積み重ねで相手が丸腰か否か、確実に判るようになった。
武器を持っていない。そして余裕のある笑み。
この爺は自殺願望ではないし、計画も綿密に練る。
その爺が余裕でいる。
まさか。
「異能力…」
気づいた時には爺は異能を発動していた。
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孤児院の扉を開けた時、周りの構成員を霧が包み込んだ。
彼女は丁度倒れるところだった。
思わず一歩を踏み出した瞬間、彼女は立ち上がっていた。
微笑んでいる。
ジャキッと音がする。
周りの構成員はこちらに銃口を向けていた。
爺が勝ち誇ったように云った。
「驚いたか小僧! 儂の異能は『禽獣』といってなぁ、かけた相手を味方につける事ができる。
今この部屋でお前の味方は誰一人としておらんのじゃよ。」
なるほど、さっきの霧が。
洗脳系の異能か。
「小僧がこの部隊の長じゃろう?こんな小僧を差し向けてくるとはポートマフィアもいよいよ人手不足かのぉ?」
「そうかなぁ。こんな弱小組織よりは人がいるとは思うけどね」
「黙れ小僧。」
爺が笑みを消した。
「今からお前を殺す。この4682がな。4682はなぁ、頭が切れるだけじゃのおて殺人術も極めとるんじゃ。安心せい、周りの男共には手は出させんよ。小僧がまだ年端もいかぬ少女に殺される。それを元部下に見せつけてやるといい。」
彼女がナイフを構えてこちらへ走ってきた。
お久しぶりです、皆さん。葉瑞希です。
え~亀更新と云いながら全く更新してませんでした。すみません。
そして雑ですね。すみません。
爺のモデルは川端康成、作品はそのまま『禽獣』(きんじゅう)です。
川端さん、すみません。川端さんファンもすみません。
あと、えっと、その、これはネタバレなのかな?
例の女の子、4682ちゃんなんですが、名前が、その、普通にいけば「野口雨情」じゃないですか。
でもなんかキャラ原案がでてきて、名前が「愛夏羽」(あげは)って書いてあったんですよ。
なんだこれはと思って。
そこで皆さんにアンケートを取りたいと思います。
アンケート
女の子の名前どっちがいいですか
野口雨情
40%
野口愛夏羽
60%
投票数: 10票
できてますか?
できてなかったらコメントをいただければありがたいです。
宜しければお願いいたします。
引き続き亀更新です。
では。
駄作ですが何卒。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。