第2話

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2023/05/04 15:12
 アレイは、先に自分の住むマンションへ帰った。

 風呂に入って、さっぱりと汗を流す。

 その後。コンビニで買った弁当、刻んだキャベツとトマトのサラダをテーブルの椅子に座って口にする。ドレッシングはかけない。
アレイ
日本は俺が住んでいたところと違って弁当の種類が豊富だったな
 そんな独り言を呟き、自分の部屋で就寝。ベッドの上で眠りにつく。

 目覚ましが鳴って止まると、七時ちょうど。太陽の光がカーテンから漏れている。もう朝だ。腕を伸ばしてあくびする。

 起き上がれば机の上のスマホが鳴っている。この番号に見覚えがある。ノリーだ。
アレイ
どうした?
ノリー
大変よ!私が通っていたビルが爆発したの!すぐに来て!
アレイ
なんだって!?もう来たのか!
 急いで走り、窓を開けてベランダに出る。
アレイ
救急車と消防車、パトカーの音だ。本当のようだな……
ノリー
ええ、思ったより早かったわね
アレイ
くっそ!またイカレたやろうか!
ノリー
ふふ……そうよ。右手の甲に一つの目が書かれていたの。見覚えある?
アレイ
(目を見開いて)まさか……アイツか!
ノリー
えぇ、あなたを殺しに掛かった犯人よ
アレイ
そいつは!どこへ行ったんだ!
ノリー
あなたの家の方面に行ったわ。今すぐここから逃げて
アレイ
いや、逃げも隠れもしないさ。あいつを始末するために、俺は日本に支部を置いているマフィアの一員になったんだ!例え死んでも構わない
 スマホの通話を切った。今現在何の武器もないが、家の中には隠れる場所がたくさんある。
アレイ
(大丈夫だ。奴を仕留めてやる)
 開いている窓に拳を構えてボクシング選手のような格好をするが、誰もこなかった。
アレイ
どういうことだ?誰もこないだと!?仕方ない、ノリーにまた連絡するか
 彼女の電話番号をまた入力。通話ボタンを押した。呼び出し音を何回か聞く。どれくらいかして彼女の高らかな声が聞こえてくる。
ノリー
あら?どうしたの?
アレイ
おい、誰もこないぞ!
ノリー
変ね。私嘘ついてないわよ。でも犯人の顔、見てないのよね
アレイ
ああ、写真やプロフィールを渡されたのだが写真は黒塗りでどんな顔をしているのかわからない。プロフィールも一切不明。恐ろしくないか?
ノリー
ええ、そうね。一つだけ聞いてもいいかしら?
アレイ
なんだよ?
ノリー
貴方は誰?
アレイ
えっ?なんだよ!俺はアレイ・バーテニーだ。今更なんだよ
ノリー
そうよね、ごめんなさい。勘違いだったみたい
アレイ
はぁ……わかればいいんだよ。で、その犯人はどんな服装だったんだ?
ノリー
……覚えてない
アレイ
覚えてないってどういうことだよ!お前は目がいいし、その犯人を遠くから撃ち落とせただろ!なぜしなかったんだ?
ノリー
……少し油断していたの。背後から掴まれてブスッと……
アレイ
なるほど、お前ノリーじゃないだろ!犯人だな
三奈
ふーん、なかなかやるわね。でもどうして分かったのかしら?ブスッと刺されても小さい怪我かもしれないのに
アレイ
ああ、名前を尋ねられてピンと来たんだ。俺は毎日ノリーに非通知で電話をかけるのさ。非通知でかけるのは俺だけ。お偉いさんに捕まらないようにね。本人だったらいちいち聞くはずもないさ。それに発音も日本人並みに悠長だし
三奈
チッ
 そのまま自動的に切られて、ノリーの場所を告げられることはなかった。下からベランダの場所に、女が乗り込んでくる。

 黒いコートを着ており、人相が悪そうな顔をしている。手の甲には目のマークが書かれていた。
アレイ
(焦りながら)なぜ下から!?
三奈
さあ、ここで死んでもらおうか
 女は銃を向けて威嚇する。
アレイ
いいぜ
三奈
何!?
アレイ
殺したきゃ殺しなよ
三奈
変な奴だな
アレイ
ああ、俺は変な奴だ。人間が憎くてたまらないが、自分がこの世にいなくなっても後悔はない。憎悪の塊の人間様に殺されるんだ。至福なことだ
三奈
なぜ笑っている?お前のことを一度殺しかけたんだぞ!なぜだ!私のことが憎くないのか?
アレイ
憎いさ。自分の体に大きな怪我を負わされたからね。復讐したいと思っている
三奈
なら私のこと、消せばいいだろ!なぜしない?
アレイ
もういいんだ。例え復讐したとしても人間は悪そのもの。何も解決しない
三奈
じゃあ!
アレイ
これ以上喋るなよ、一つ目の親分
三奈
えっ?
アレイ
さあ、憎かった俺を撃ちなよ
三奈
でも
アレイ
俺はお前を傷つけないさ。さあ、やれ!
三奈
ごめんなさい……
 銃声の音がした。それはベランダと部屋中に響き渡る。女とアレイは両方とも倒れた。

 しかしアレイの方は的が外れて、殺されることはなかった。どうやらノリーが彼女を撃ち殺したようだ。遠くから。

 そしてまた電話がかかってくる。アレイはそれを握りしめて、スピーカー機能を作動した。
ノリー
貴方が殺されそうになっていたから、倒したわ。感謝してよね
アレイ
別に助けなくてもよかったのに!なぜ助けた!?
ノリー
それは……
アレイ
(吠えて泣きながら)俺が復讐したかった相手なのに、なぜお前が殺した?俺はなんのために復讐を目論み、この組織に入ったのか分からないじゃないか!
 アレイは窓を潜って台所へ向かい、包丁を握りしめた。

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