樹said
ミニ会議が始まった。
今日もいつも通り俺が進行する。
みんなの視線が舘様に向く。
佐久間くんらしくない涙が溢れている。
急なカミングアウトに俺等は驚きを隠せない。
舘さんが…吸血鬼?
あまりのショックにちょっと大きい声を出してしまう。
会議室にすすり泣きの声が響く。俺ももらい泣きしそう。
俺はびっくりした。ゲームマスターが言うとは思わなかったことを発したから。
いつもだったら「オッケー!じゃあ投票に移るねー」って言ってるのに、参加者にこんなこと言うなんて…。
ゲームマスターと舘さんの言葉は、もう誰も止めれなかった。俺等に出来るのは、ただ頷くだけ。
そう言って舘様は手を上げて待つ。撃たれるのが怖くて俺は半目でその様子を見る。俺よりも、舘様の方が怖いはずなのに、舘様は怖がる様子がない。
バァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ン!
その銃音で俺は思いっきり目を瞑った。
…目を開いたときには、舘様は既に撃たれて倒れていた。
ふっかがその場に崩れ落ち、佐久間くんはすぐに舘様の体を揺さぶる。だけど、奇跡は起きなかった。
そんな残酷な時間の中、1人が大声を出した。
神山くんだった。
その時、俺は何となくゲームマスターが誰なのか絞れた気がした。まだ確信ではないけど。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!