第9話

:黒獣と首輪の棘
3,723
2024/01/30 13:39
あなた
離せッ!
芥川龍之介
芥川龍之介
離す訳無いだろう?
私は、龍之介を強く押したが、あまり効果は無く、平然としている様子だった。
あなた
ッ!
あなた
芥川ッ!!!
全く云う事を聞こうとしない龍之介に苛立ちを覚え、咄嗟に名字で呼ぶと、怒ったかのように顔を顰める。
芥川龍之介
芥川龍之介
貴様、僕の云う事が聞けないのか?
あなた
其れは此方の台詞だ!
芥川龍之介
芥川龍之介
ならば、僕の印をつけてやる……♡
あなた
やめッ!
龍之介は私の首元を覆う、タートルネックの裾を下ろすと、眼を見開いた。
其れは怒りでは無く、驚きだった。
芥川龍之介
芥川龍之介
何だッ……、此れは……?
芥川龍之介
芥川龍之介
貴様、出血しているぞッ!
表情は驚きから、不安と焦りが入り混じったかのように変化し、私の首元を見つめている。
あなた
……ずっと、ずっとはめられてた
芥川龍之介
芥川龍之介
……
芥川龍之介
芥川龍之介
場を変えるぞ……
そう云いながら、龍之介は私の手を優しく握り、引っ張った。
芥川龍之介
芥川龍之介
……何故、首輪をはめている
静かな路地裏に響く冷淡な声音。
此処はマフィアの敷地でもある為、人は余っ程来ない。
あなた
私の異能は相手を安楽死させる
あなた
発動条件は、相手の名前と顔を知っている事
あなた
孤児院に居た頃は異能を制御出来ず、死者が多発していた
芥川龍之介
芥川龍之介
……犯人はあなたの下の名前……、という訳か
あなた
ッ……
あなた
其れで、院長にこの首輪をはめられた
あなた
異能を使う度にどんどん締まって、喉笛に棘が突き刺さる
芥川龍之介
芥川龍之介
だから出血していたのか……
あなた
其れに加えて、小さい時に首の傷口から菌が入って、病気を患った
芥川龍之介
芥川龍之介
病気ッ……?
何処か残念そうに、眉を潜める龍之介に微笑を零した。
あなた
誰にも云ってないけど、……
あなた
私、もう声が出なくなるんだってッ……
芥川龍之介
芥川龍之介
声が……、出ない?
芥川龍之介
芥川龍之介
探偵社の女医の異能で治せないのか!?
あなた
判らない……
未だに微笑しながら龍之介に語り掛ける私に腹がたったのか、肩を強く掴むと、荒い口調で云う。
芥川龍之介
芥川龍之介
笑うなッ!
芥川龍之介
芥川龍之介
偽りの笑み等要らぬッ!
あなた
笑うよッ!!!
芥川龍之介
芥川龍之介
ッ!?
突然の大声に驚き、手を離す芥川。
あなた
笑わないとッ!
あなた
自分が壊れていく気がするからッ!
あなた
偽りでもッ、笑うよ……!
芥川龍之介
芥川龍之介
……
芥川龍之介
芥川龍之介
人虎にも云ってないのか?
あなた
うん
芥川龍之介
芥川龍之介
そうか……
芥川龍之介
芥川龍之介
ならば、僕が本心で笑わせてやる
あなた
でも……
芥川龍之介
芥川龍之介
……僕はあなたの下の名前が病気だろうと何だろうと、優しくはせぬ
芥川龍之介
芥川龍之介
貴様の望む、"何時も通り"で接してやる
あなた
ッ……!
あなた
……有り難うッ……
私は首輪を軽く撫でるように触ると、何時もの毒々しい雰囲気は感じられなかった。
芥川龍之介
芥川龍之介
走るッ、な!
あなた
早くしないと置いてくよ?
芥川龍之介
芥川龍之介
貴様ッ!
私は、ほんのりと笑みを見せた。
また次回

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