あなたの名字side
俺は柔道着に着替えるためにトイレに来た
本当は普通に更衣室で着替えたいけれど、女の体である俺は男子更衣室に入れない
だから柔道がある日は誰もいないな男子トイレへ駆け込む
廊下の方からあの2人の声が聞こえてきた
あのふざけたデートかは三日間、なぜか坂田の声を聞くと体がビクッとなってしまう
そのせいで今朝も挨拶したあと思わず逃げてしまった
なにをしてるんだ私は……
そして坂田を見るたびに頬が熱くなる
前まであんなに嫌っていたのに
今はなぜか“一緒に居たい”と思うようになった
センラ先輩にドキドキするのは当たり前だけど…なぜか坂田にもドキドキしている……
そう、私の本命はセンラ先輩
センラ先輩のために私は男装までして近づこうとしているのだから
私は素早く柔道着に着替えて、誰にも見つからないよう武道場へと向かった
ドンッ!
柔道は小さい頃習っていたせいか男相手でも普通に1本とれる
けど…
固め技は相手との距離がどうしても近くなってしまう
もし女だとバレたら……
いや、変に意識すると怪しまれて逆効果だろう
そして俺の体の上に相手がのってきた
どうかバレませんように……
俺はただそう願うしかできなかった
柔道授業が無事終わって俺はいつも通りトイレへ向かうが…
どうやらトイレ中が水浸しになって使えないらしい
他のトイレはどうせ男子が溜まってるだろうし……
俺は仕方なく更衣室で着替えることにした
あーうるさい
男子更衣室ってこんなにもうるさいのか?
これならさり気なく角で着替えてたら気づかれないな
そう思ったのはつかの間だった
や、やめろ…!!
やっぱり男子更衣室で着替えるのは間違ってた
このままだとバレてしまう…!!
ダメだ終わった…
もう学校来れないかもしれない
センラ先輩とも会えなく……
俺が1人の男子に腕を掴まれたときだった
坂田はなぜか上半身びちょびちょで更衣室に入ってきた
そして私への注目が一瞬で坂田への注目へ移った
あっ危なかった……
濡れた髪を坂田は片手でかき上げた
そう言ってうらたくんと坂田以外の男子たちは更衣室から出て行った
俺はタオルを持って坂田に近づいた
すると、坂田は俺をロッカーの前に立たせて俺を覆うように壁ドンしてきた
坂田の顔はとても怒っている
俺は言葉を失った
そして坂田の濡れた髪から雫がぽたぽたと落ちてくる
そうか
坂田は俺のためにわざと濡れたのか……
また言われてしまった
「甘すぎ」と言われたときと同じだ
2度も言われるなんて…私はあの時からなにも成長してないな………
坂田が言ってることが正論で私は反論ができない
坂田…お前が私より私のことを理解してるなんてな
そう言って坂田はタオルで頭をゴシゴシと拭いた
たまたま…なんて嘘バレバレだぞw
でも、そうやってさり気なく気遣ってくれるのが坂田のいいところなんだろう
私は坂田からタオルを取って代わりに拭いてやった
………今度坂田にクッキーでも作ってやるか
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。