梅雨明け
7年前の梅雨明けの日。
妹・八城みのりは、15歳の若さで忽然と姿を消した。
警察による捜索もむなしく、事件か家出かも分からないまま、時だけが過ぎていった。
姉・八城椿は、あの日以来ずっと「真相」から目を逸らして生きてきた。
東京でひとり、感情を押し殺して働く椿のもとに、ある日届いた一通の手紙。
――中には、妹が好きだった紫陽花の押し花と、たったひとこと。
「また、会いたい」
差出人は不明。だが消印には、ふたりが暮らしていた故郷の町の郵便局の印。
封筒は、なぜかほんのり湿っていた。
やがて椿は、記憶の底に沈めていた町へと戻る決意をする。
母との再会、忘れていた人間関係、そして、どこか不自然に沈黙を守るかつての友人たち。
真実は雨のように降りしきり、心を濡らす。
だがその先に、ひとすじの光があると信じて――。
「私はあの日、妹の言葉を最後まで聞いていなかった」
過去と向き合う旅が、いま始まる。
ー 21,984文字
favorite0
grade0
update 2025/07/08