第4話

心中しようよ。-④
211
2024/01/04 11:00
瑞希
…何。
屋上の柵を飛び越えて、もう身を投げる寸前の瑞希の手を、柵越しに掴んだ。
待ってくれ、どうしたんだい?
話なら聞くかr…
瑞希
聞いて何になるの?
瑞希
放っといてよ。
瑞希を救いたいんだ。
瑞希
類なんかに救えるわけ無いでしょ、さっさと手離して。
まさにその通りだ。
中学あの時だって、只々隣りに居てあげることしかできなかった。
それが瑞希のためになったと思う?
全部、僕の勘違いだったんだ。
じゃあ、今僕がすべきことは?
瑞希
ねぇ、早く…
瑞希
もう楽になりたい。
…瑞希。
瑞希
好きだよ瑞希。
瑞希
…!
柵越しに瑞希を抱きしめると、大粒の雫が肩に伝ってきた。
瑞希
遅いよ…
瑞希
ボクも…ボクも大好き!
ふふっ、同じ気持ちで居てくれて何よりだよ。
何とか気持ちは伝わったようで、瑞希も嬉しそうな顔を浮かべていた。
これなら、きっと…
瑞希
でもね…
瑞希
やっぱり、苦しいんだ。
え…
瑞希
死にたいって気持ちは変わらない。
瑞希
だから…
…そんなことで、俺が君を離すと思ったのかい?
瑞希は小さく頷くと、後ろを向いた。
離さないよ。
僕は柵を飛び越えると、瑞希の手を取った。
身を投げるつもりなんだろう?
僕も一緒に、身を投げようじゃないか。
瑞希
でも、類には…
僕だって、瑞希と同じ気持ちさ。
瑞希
…!
瑞希
もー…しょうがないなぁ。
いち、にー、さんでいくよ。
瑞希
オッケー!
後ろから、ギシギシと音がする。
瑞希の想いが悪い方向へと進んだ今、セカイが壊れかけているのだろう。
でも、そんなこともどうでもいい。
今はこうして、瑞希と一緒になれるのだから。
瑞希
いち…
にー…
『「さん!」』
真っ黒な溝へと落ちていく中、瑞希と笑いあった。
瑞希
ボクと落ちてくれてありがとう、類。
最後に聞こえたのは、そんな瑞希の言葉だった。
end.

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