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完結夢小説
君が僕を忘れても、ケセラセラ

君が僕を忘れても、ケセラセラ

「初めまして。君の特等席のシンガーです」 目の前で、くしゃりと顔を歪めて微笑む綺麗な人。彼の目から、大粒の涙がポロポロと溢れて、私の手の甲に落ちた。冷たい。だけど、すごく温かい。 「あの……私、あなたのこと、知ってますか……?」 恐る恐る尋ねる私に、彼は泣き笑いのような顔で、優しく首を振った。 「ううん、知らなくていいよ。今日からまた、始めればいいだけだから」──私の頭の中には、消しゴムがある。大切な人の名前も、愛された記憶も、全部、真っ白に消えていってしまう病気。 昨日まであんなに愛おしそうに私を抱きしめてくれた彼の名前すら、今の私は思い出せない。だけど、私の手を握る彼の指の震えが。必死に涙を堪える、その歌うような優しい声が。 なぜか、胸の奥をキリキリと締め付ける。「私の、名前……知ってるんですか?」 「知ってるよ。世界で一番、大好きな人の名前だもん」彼は私の涙を親指でそっと拭うと、ポケットから1つのイヤホンを取り出して、私の耳に片方だけ差し込んだ。流れてきたのは、優しくて、どこか力強い音楽。『ケセラセラ今日も唱える』「……あ」自然と、涙が溢れた。記憶は思い出せないのに、私の心が、この声を、この曲を、痛いほど覚えている。「なるようになる、だよ」彼は私の頭を優しく撫でて、耳元で小さく囁いた。「君が明日、僕の全てを忘れても。僕は何度だって、君に恋をするから」これが、私と彼の、新しくて切ない『始まり』の物語。

ー 16,643文字

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21時間前