見えた。…のに……
あーあ……やっと…
…ッ…やっと…ッ"本当"のお母様に会えたのに…
サーッ…
やっぱり俺、桜なんか大嫌いだ。
俺の大切な人を……"連れ去ってしまうから"
みんな……ッ…みんな……
この桜に……全部…ッ…
もうすぐ日が沈んじゃうや…
…やだな…
帰りたくない…ッ……
……でも…仕方ないよね…
"二人とも"
次は……お父様の話をしようか。
…お父様は……。"嵐のように現れて、消えた人"だったなぁ…
『なんだ?らん。』
『……いや。』
『…"嫌い"だな。』
俺がお父様とした会話はそれくらい。
……"嫌い"なんて、そう簡単に言えることじゃない。
なのにお父様は…あんなにバッサリと切り捨て言った。
……お父様は、なかなか家に帰ってこなかったから、よく顔も覚えてない…けど…
……お父様は、お母様とは何かが違った。
……なんていうか…雰囲気?…っていうのかな…
お母様は、まだ顔に優しさが滲み出ていた。
…でも、…お父様は……___
__お父様の表情からは、優しさなんてこれっぽっちも感じられなかった。
多分…、これは予想だけど…。
__お父様は、本当に俺達の事がどうでも良かったんだろうな…って。
一件お母様より優しく見えるけど……、本当は、一番優しくない。
…そりゃそうか。三股してたんだから。
……優しかったら、浮気なんてするはずない。
……俺は、お父様が"嫌い"だ。
お母様に全部全部責任を押し付けて…挙句の果てに逃げた。
…そんなお父様は"大嫌い"だ
…お父様の行方は、今も分からない。
遺体だって見つかってない、痕跡も見つかってない。
一体どこに行ったのか、検討もつかない。
…そんなところだ。
???視点
……みんな。いい子達だから……
__どうか…美結の分まで……
『笑って生きてね』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!