ルートさんの家はそれはそれはとても素朴な内観であった。
キッチンにリビングはすごく標準的な家に近い内装だ。視線を移した先にあったダイニングテーブルにはパソコンといくつかの本、そして何故かハロウィンモチーフっぽいランタンが並べられていた。
しかし、ごちゃごちゃしておらず、とりあえず生活必需品1式揃えました、という感じである。
「シンプルですね…」
『そうか?これでも結構増やした方なのだが』
私の口から思わず零れた言葉を逃さず、ルートさんは言葉を紡ぐ。
『やはり耳が良いのが影響してな。あまり物が置けないんだ』
そう言ってルートさんは帽子を取り、自分の頭頂部にある獣のような耳を指した。
……獣のような耳?!
一瞬、頭が真っ白になる。
「え、え、人間ですか?!コスプレ?!」
「なんですか?!?そういう趣味?!?!」
私は声が上ずると共に本能的な後ずさりが出た。え、人間の構造上、そんなもの生えるわけなない。だからこれはジョーク。きっとそうだ。そういうことだ。
『…あー、気づいてなかったか』
『俺は、狼男だ』
「え」
心臓が跳ねる。脳の処理が追いつかない。一刻も早く逃げなければ。
人間の脳とは不可思議なものであって、そう感じると足はすぐ動いた。反射、といっても過言ではない。
「助けて助けて襲われるごめんなさい神様仏様ゼウス様っ」
『待て待て待て俺はあなたを襲わないし、人肉になど興味はないぞ!!』
私が慌てて玄関へ逃げようとしたところを、ルートさんに手首を両手で抑えられる。
なんなんだ。私が無理やりねじ曲げて納得させた事を一瞬でぶち壊してきたのはそっちだ。今更とっ捕まえようだなんて…
そう思い、視線を移すと、見えたのはまるで犬のように毛で覆われた爪と肉球。紛れもなく獣のそれだった。
「がちで狼じゃん…」
言葉が勝手に滑り落ちると同時に思わず動きが止まる。
『止まったか…何回でも言うが俺は貴方を襲ったりしないぞ、神に誓う』
ルートさんの声には確かに焦りも含まれているのに、顔は真摯に私と向き合っていた。
「本当に…?」
それに受け答えしようとする自分の声はわかりやすいくらい震えていた。
『本当だ。不安ならば数百m先に住宅街がある。そこの方々と交流があるから俺のことを聞いて回るといい』
そこまで聞いてやっと ふっ、と力が抜ける。
「そう言うのならば…信じますよ」
『ああ、信じてくれ』
ルートさんはそっと手を離した。私はその場に座り込む。とてもじゃないが怖かった。
『…怖がらせて悪かった。最初に言っておけば良かったな、すまない』
ルートさんは申し訳なさそうな口調で言葉を紡ぐ。
『俺が最初にここに来た時、人間の反応もそうだった…忘れていた、すまない』
「い、いえ…こっちも早とちりしてごめんなさい」
昔の話を言われるとこちらも申し訳なくなってくる。きっと狼男という種族のせいで毛嫌いされたことも多かっただろう。私はただ自分の行動を恥じた。
『…落ち着いたら、リビングのテーブルに座ってくれ。どう帰るか考えるためにな』
『コーヒーは飲めるか?用意しておく』
「は、はい。全然飲めます」
『良かった、この家には水とコーヒーしか用意できるものがないんだ』
ルートさんはホッとした様子でキッチンに向かっていく。
落ち着いたら、と言っていたがもう立てるくらいにはなっている。
私は若干産まれたての子鹿みたいな歩き方になりながらも なんとか席に着いた。
ルートさんがキッチンで作ってきたであろうコーヒーを置き、正面に座る。テーブルのランタンが揺れて、橙色の光がルートさんの耳を照らした。
『…落ち着いたようでよかった。』
『さて、急で悪いが、まずは貴方がどうやってここに来たのか、聞かせてくれないか?』
ルートさんが静かに言った。
私はカップを見つめながら、ようやく息を吐く。
……ここから、どう説明すればいいんだろう。
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なんか今回長くなりました。申し訳ない。
前話出した後の数日は「伸びないなぁー文才ないしなー」なんて思ってたら、3人読者着いててとてもビックリしました。ありがとうございます!
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。