第6話

境界線が揺らぐ
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2025/11/29 11:00 更新
《Anxin side》



今夜は、ジュンソヒョンの提案で8人全員で夜ご飯を食べることになった。上の階のダイニングテーブルをぎゅうぎゅうと囲む。

サンヒョナが最近ハマっている新しいゲームの話をし、シンロンがつられるように説明を加えて、
賑やかな食事の時間が続いている。



そんな中で、リオヒョンだけが静かに額を押さえていた。


隣で鍋をつまむサンウォニョンの二の腕を、
ツンと押す。
Leo
……サンウォナ、俺ちょっと頭痛くて。
今日は先に部屋戻るわ。ごめんな。
Sangwon
大丈夫...?後で食べられそうなもの
持っていくね。


慌てて振り返ると、
リオヒョンはもう玄関の方へ向かっていた。

かすかに揺れるまつげを伏せながら。



Anxin
(また、1人で苦しんでる顔だ。)
胸のどこかがざわりとした。

Geonwoo
アンシニ。デザート、食べるでしょ?

ゴヌヒョンに声をかけられ、曖昧に頷く。

けれど、フォークを持つ手は動かない。


頭の中には、さっきのリオヒョンしか浮かばなかった。

苦しそうで、それなのにどこか艶のある表情。



Anxin
(……今、会いに行っちゃだめ。)
頭では抑えていても、
気づけば身体は立ち上がっていた。



Anxin
ちょっと、昼間下の階に忘れ物しちゃって……取りに行ってきます。
サンウォニヒョンとハオヒョンだけが
一瞬僕を見た気がする。


けれど、他の4人は勿論気付いていない。ジュンソヒョンが楽しそうに2人に話しかける。だから6人の視線は上の階のリビングに向いたまま。楽しそうな話し声はしばらく落ち着きそうになかった。


階段を降りていくと、途端に静けさが満ちてくる。

自分でも分かるほど心臓がうるさい。




ドアノブに触れた指が震える。


Anxin
(……開けるな。やめろ。)
そう思うのに、ドアは軽い音を立てて開いてしまう。


部屋に足を踏み入れた瞬間、温かい空気が肌を包んだ。


リオヒョンの体温をそのまま閉じ込めたような良い匂いがする。
掛け布団もなく、
リオヒョンは仰向けに横たわっていた。

Leo
……アンシニ?
Anxin
体調、大丈夫ですか?熱、あるんじゃ...
思わず近づくと、ヒョンはふっと笑う。

Leo
大丈夫...実は、サンウォナの横にいるのが、少ししんどかっただけで。
唇の端は上がっているのに、
瞳の奥はどうしようもなく苦しんでいた。



ベッドの縁に腰掛け、ヒョンの無防備なお腹に手を添える。
ヒョンは少し驚いて、

それでも縋るような目で僕を見つめてくれた。


Leo
それに。アンシニ、来てくれないかなって、ちょっと期待してた。
心臓が飛び出そうなほど跳ねる。


やっぱり、熱があるんじゃないのか。

普段なら絶対に言わない。
今のリオヒョンはタガが外れている。


だからこそ、危なかった。




Anxin
な……何言って……
前、僕が相手しますよなんて上から目線で言ったくせに。

いざリオヒョンに誘われると、言葉が喉の奥に引っかかって出てこない。




リオヒョンがゆっくり起き上がる。

ベッドの上に座ったまま、手が頬に添えられた。

反射的に振り払おうとしたけど、、、身体が動かない。

額の距離がゆっくりと縮まり、それにつられて
思わずリオヒョンの腰に手を回してしまう。



Leo
アンシニ……
Anxin
リオ...ヒョン...


唇が今にも触れそうな距離。

そのまま、欲望に任せて、どうにでもなってしまえ。
2人はきっと、同じ気持ちだった。




でも、その瞬間——
同じ違和感に気づく。

身体の大事なトコロが、反応しない。

いつもなら簡単に熱を帯びるはずなのに。

今夜は、どちらもその気配すらなかった。




Anxin
(……恋人じゃないから?それとも、
これは本当の欲望じゃないってこと?)
一気に現実へ引き戻された気分だった。

リオヒョンも、困ったように苦笑する。


Leo
……俺たち、なんか……変だな。
Anxin
はい。変です。


お互い相手に触れていた手を、そっと離す。


Leo
……アンシニ、今のは、忘れて欲しい。
Anxin
もうすぐ、忘れます。


立ち上がり部屋の扉へ向かうと、

ヒョンはふっと息を吐き、
そのままベッドに背を預けた。




彼の心の中にいるその人を、

僕ごときが上塗りできる訳がない。



そしてそれは僕も同じだった。

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