暗闇の中にいた
ここがどこなのかわからない
感覚があるのか無いのか
それすらも
このまま周りの闇に溶けていくのか
そう思った瞬間
温かい 誰かの声が 聞こえた
◆◇◆◇◆◇
※アルト視点
クロトが目を覚ましてから数ヶ月。
毎日シャニの病室を訪れているが、全く目を覚ます様子はなかった。
「……ったく。いつまでも寝てんなよこのやろー。」
「クロト、お前もう少し素直に心配するとか出来ねェのかよ…。」
「はぁ!?オルガに言われたくないね!このぶぁーかっ!」
「んだとてめぇ…!」
「はいはい、病室で喧嘩すんな。」
俺たち自身も完全回復には程遠い為、毎日リハビリや検査を受けている。
そしてそれぞれのやるべきことを終えた後、自然とシャニの病室へ集まるのだ。
こうしていると、なんだか以前と何も変わらないような気がする。
オルガとクロトは喧嘩して、俺がそれを宥める傍でシャニが眠っていて。
だからこそ2人もお互いに煽るようなことを言うのかもな。
そうしていれば、シャニがマイペースに起き上がってくるんじゃないかって……。
今の状態で、そんなこと…ある訳ないのに、な………けど…
「そうなら、いいよな……シャニ……。」
クセのある長い前髪を梳く。
現れた左目は今は閉じられていて、綺麗な金色の瞳は見られない。
代わりに、その目には大きな傷痕が走っていて凄く痛々しかった。
「~♪~♪~」
ーー 繰り返す世界 何度手を伸ばしたら ーー
俺は最近覚えた歌をシャニの隣でゆっくり歌う。
ーー 君の隣でずっと変わらず護るだろう ーー
ーー あげたかったのは未来で ーー
本当はアップテンポな曲だったが、ゆっくり静かに歌う。
シャニに、届くように。
「………………。」
「………………。」
………なぁ、シャニ。
みんな待ってんだぜ、お前のこと。
前はバラバラで、自分のことで精一杯だったけど。
やっと…自分の足で歩けそうなんだ。
外の世界に出られるんだよ。
だから………目を覚ましてくれ。
帰ってきてくれよ……シャニ……!
ーー 確かな絆を強く握り 進もうどこまでも ーー
ーー 穢れきった奇跡を背に ーー
「…………ぁ……………」
「!!」
「シャニッ!?」
「こ、コール…ッ!」
シャニ…ッ!
◆◇◆◇◆◇
あれからすぐに医者を呼んで、シャニの容態を診てもらった。
一番重症だった分、後遺症が残る可能性があるが、意識が戻ったなら回復も期待出来るかもしれない、とのことだ。
「……あ…う…お………」
「あぁ。ここにいる。」
上手く声が出せないようでパクパクと口を動かして伝えようとしてくる。
俺の名前を呼んでいる。必死に、縋るように。
「皆いるから…オルガもクロトも……。」
「………あい……あ…おう……」
〝ありがとう〟
「ばっか…!それ言うのはコッチだっつの。」
「お帰り、シャニ。帰ってきてくれて……ありがとう…っ!」
やっと全員目を覚ますことが出来た。
やっと皆で笑い合える……。
生の実感が溢れてきて……………暫く涙は止まりそうになかった。
了
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歌詞 引用
LiSA 『Oath sign』












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!