あなたの下の名前side_
そんなことを話しながらドアを開け外に出る。
もわっとした生ぬるい空気が肌を覆い、
どこからか聞こえてくる蝉の声に夏を感じる。
視界に広がるのは、夕日の色で染められた橙色の空。
あと数時間もすれば日も落ちて暗くなるだろう。
私たちは今から夏祭りに行く。
夏祭りというか花火大会というか。
夏と言ったら、という行事だ。
せっかくなら、ということで
慣れない浴衣を着て下駄を履いている。
もちろん私だけではなくみんな揃ってだ。
そんな話をしながら、
夏祭りが行われる川沿いへと
下駄の音を響かせながら向かう。
隣を歩いていて急に立ち止まったかと思えば
両手で顔を覆う蓮。
視界いっぱいに拡がるオレンジ色の灯り。
左右に屋台があり、奥までずらっと並んでいる。
焼きそば、かき氷、ベビーカステラなどの食べ物系、
その他にも、
射的、金魚すくい、輪投げなど遊び系のものもある。
道はたくさんの人でごった返していて、
少し油断したらはぐれてしまいそうなくらいだ。
どうにかはぐれないよう、
前を歩くみんなに必死に付いて行く。
ただでさえみんなの方が一歩が大きいのに加え
普段履かない下駄を履いている為、
付いて行くので精一杯で。
本当にはぐれないように気をつけないとな、
なんて思っていると、
横にいた人が無理矢理体を私の前に押し込んできて。
グイッ
やばい、そう思った瞬間、
斜め前の方からぐいっと腕を引っ張られ、
目線をやるとそこには蓮がいて。
「ちゃんと掴んでて」と言い、
掴んでいた私の手首から手を離し、手を繋ぎ直す彼。
私よりもずっと大きい手のひらで
しっかりと私の手を握っている。
私だってもう立派な大人なんですけど?!
そう思いながら、
前を歩いているケラケラ笑っている蓮を軽く睨む。
「そんなことある?」と言いながら歩いていく蓮。
ぎゅっと握られている手を眺めて、
蓮もイケメンなことするんだな、
なんて思いながら彼の後ろを付いて行った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。