第2話

当たり前だった声
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2026/06/15 10:00 更新
スタジオに響く音は、いつもより少しだけ大きく感じた。
それは機材のせいでも、部屋の広さでもない。
ただ単純に__調子が良かった。
れるはマイクの前で、軽く息を整える。
喉の通りがいい。音が自然に乗る。
歌うたびにわ自分の声がちゃんと"そこにある"と実感できた。
K
今のめっちゃよくない?一回通しで撮ろうよ
C
うん!今の感じならそのままいけそう!
あなた
れるちめっちゃ調子いいじゃん。今日当たりだね
少し照れながら、れるは小さく笑う
R
そんなことないで。みんなが合わせてくれてるからや
K
いや、普通にれるちの声がめっちゃいい。ちゃんと乗ってる
K.Y
自信持って。今のはほんとによかった
C
うんうん、なんか安心する感じした!
K
俺も〜!
褒められるたびに、少しだけくすぐったくなる。
でも嫌じゃない。この空気が好きだった。
"ここにいれば大丈夫"
そう思える場所があることが、何よりも支えになっていた。
録音が再開される
音楽が流れ、リズムが刻まれ、
その上に自分の声を重ねていく。
迷いはない。
言葉も、音も、ちゃんと前に出る。
__そのはずだった。
ふとした瞬間、ほんの一瞬だけ。
音が"引っかかった"気がした。
R
……ん?
K
どうしたの?今のところミスった?
R
いや、なんか…ちょっとだけ変な感じがしたんよね…
K.Y
喉?大丈夫?
R
おん、痛くはないんやけど……
違和感は一瞬で消えた。
もう一度歌えば、さっきと同じように声は出る。
だから、気のせいだと思った。
K
疲れてるんじゃない?一旦休憩いれる?
C
無理して撮っても意味ないしね!
あなた
それにれるち、すぐ無理するんだからw
R
おん、ごめん。ちょっとだけ
C
ちむも疲れた〜!
K
ちむ、疲れるの早すぎ(笑
マイクから離れ、深く息を吐く。
さっきの感覚を思い出そうとしても、うまく掴めない。
ただ一瞬、"音が途切れた"ような__そんな曖昧な感覚だけが残っていた。
K.Y
ほんとに大丈夫?
K
顔ちょっと疲れてるよ
R
平気平気。ちょっとびっくりしただけやで
あなた
無理はしないでね?
あなた
今日じゃなくてもいいからさ
優しい言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなる。
この場所があるから、歌えている
この人たちがいるから、声が出る
__そう、思っていた。
R
……ありがとう!もう一回やろ
軽く喉を鳴らす。
ちゃんと出る。問題ない。
さっきの違和感なんて、もう残っていない。
そう信じて、マイクの前に立つ。
音楽が流れる。
そして__
R
……っ
一瞬だけ、声が遅れた。
ほんのわずかなズレ。
誰も気づかないくらい、小さな違和感。
それでもれるには、はっきりと分かってしまった。
さっきと同じだ。
__何かが、少しずつおかしくなっている。

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