そう小さく呟いた私の前には大きな自動ドア。
今日、私は定期検診のために病院に来ているのである。
ここに通い始めて早1年。スタッフさんとは結構仲良くなったと勝手に思っている。
向井さんとは、大体毎回遭遇している。そのせいか、会うと世間話などをする仲になった。
5分ほど向井さんとお話していたら、ほかのナースの人も寄って来て、そのあと10分くらいずっと話した。
そろそろ行かないとマズイと思い、挨拶をしてその場を立ち去る。
椅子に座って待っていると番号が呼ばれ、診察室へ向かう。
やや間延びした優しい声。この声の持ち主は、私の主治医の佐久間先生だ。
そう行って佐久間先生は次々と検査の指示をナースにだしていく。
もう診察室を出てもいいらしいので、私は退室した。
やるべき検査と、その結果を聞き終わり、再び待合場所に戻った私は、やりたいとこノートを取り出す。
夏だから、お祭りとか行きたいな。
あと、花火とか?怪談はちょっと怖いから嫌。
そんなことを考えていると、誰かの視線を感じた。
振り向いた先に居たのは私のよく知っている人だった。
そう、元貴と私はばったり病院で会ったのだ。
聞くと、元貴は母親の検診に付き添ってここに来たらしい。私がここにいる理由は話さずとも察したみたいで、
何も深掘りはされなかった。
せっかくだから、お茶でもしようかということになり、
今に至る。この病院にはなかなかにオシャレなカフェが入っているのだ。私はいつもここを利用している。
元貴は初めてらしく、メニューを見てとても悩んでいた。
そうして私たちは注文をした。
スイーツたちはすぐにやってきて、私はとりあえず写真をとる。
「カシャッ」
スマホの中に収まった写真の元貴は可愛いかった。
加えて、カッコよかった。
思い出がひとつ増えた私は、パフェを食べれることも
あって、上機嫌になっていた。
「カシャッ」
その直後、またもやシャッター音が聞こえた。
そして、私の肩を元貴が抱いていた。
元貴はケーキを切り出した。私の声には全く気づいていないようだった。
分かっている。彼には、すべてお見通しなのだ。
検査の結果が悪かったことも、精密検査をするために
入院しなくちゃいけなくなることも。
その内容を私が話し終わると、元貴はなんとも言えない
顔をした。悲しいような、受け入れたいけど、そう出来ないような顔だった。でも、元貴は優しいから「絶対、お見舞い毎日いくね」と言って笑った。たぶん私を心配させないように。
一緒に帰り始めた私たちの背中を、夕焼け空が見守っていた。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。