あの時の屋上に、僕らは戻ってきた。
日はもう沈んでしまって、少し肌寒くなってきた。
何処かでヒグラシが鳴いている。
____辛かったことを忘れたなんて、本当は嘘だ。
現実の世界で何があったのか、僕は徐々に思い出しつつあった。
心無い言葉や多忙で、皆が目に見える様に壊れていって、心も壊れて、でも誰にも言えなくて。
“死ぬこと”が、唯一の逃げ道だと思っていた。
なのに今___その“逃げた先”にいるはずの自分が、なぜか苦しくてたまらない。
“ころんって、盛り上げ役だよね”
“うるさいけど、いると場が回るよね”
そんな声が、風に乗って聞こえてきた気がした。
さとみくんが微笑む。
何ともさとみくんらしい答えだ。
彼は、アンチから逃げなかった。
最後まで、リスナーにもアンチにも、そして僕らにも。
弱音を一言も漏らさなかった。
____だから、勘違いされたのかもしれない。
彼は現実の世界での最後、アンチの標的になっていた。
彼らは、ただ壊れないおもちゃが欲しかっただけなんだろうけど。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。