第3話

第二話
28
2026/07/02 00:37 更新
昼食の買い出しから戻り、休憩室でカップラーメンに湯を注いでいると、急に院長から呼ばれた。
どうやら急患らしい
御影
(あーあラーメン伸びちゃうかな...)
そんなことを考えながら、飼い主との問診が始まった。
レオの飼い主
先生!うちのレオ、朝にはいてしまって、それで...
相当慌てているようだ
僕は飼い主を落ち着かせようと微笑みながら聞いた
御影
大丈夫です、少し落ち着いてください。
ではまず、いつくらいから様子がおかしい事に気が付きましたか?
レオの飼い主
えっと、昨日の夜から、です。
何度もトイレにはいくんですけど、おしっこが全然でなくて...
それは......
結構まずいかもしれない
御影
まずはレオ君の容態を確認するので少し待っていてもらえますか?
レオの飼い主
はい、わかりました...
レオ君を診察台に移す
『レオ 5才 去勢済み オス猫』
それと、昨日から尿が出ていない
診察してみてわかったが、おなかが張ってる。というよりか膀胱が硬くなっている
これは...
御影
(尿道閉塞か...)
その瞬間だった
カァーン......
小さくはあるが鐘の音が聞こえた。
「尿道閉塞」
膀胱から尿を体外に排泄するための尿道が何らかの原因で詰まってしまい、尿が出なくなってしまう病気のこと
放置してしまうと、急性腎障害や尿毒症につながり命にかかわることもあるぞ
この病気で最も多い原因は尿道に結石が詰まってしまうこと
結石のほかにも膀胱炎から炎症物質がたまってしまったり、ゼリー状の分泌物がたまってしまうこともある
(尿道栓子(にょうどうせんし)と呼ばれる)。
みんなも飼い主なら、ペットがトイレをしているときは時々注意してみるのも大切かも!
御影
膀胱がかなり腫れているので、尿道閉塞の可能性が高いです。
血液検査、お願いします。
小鳥遊
オッケーです
採血をして、血液を調べている間に僕は腹部の画像検査を行う。
御影
...結石が見当たらない...
小鳥遊
ってことは尿道栓子(にょうどうせんし)かもね。
御影
ですね、問診の結果からもその可能性が高いと思います。
血液検査の結果からも、腎臓にダメージがあることが分かった
僕は、飼い主にレオ君が危険な状態にあり、手術が必要であると伝えると、
とても、動揺していたが手術に同意してくれた
僕は絶対助けますから、と言い残して、処置室へ急いだ
処置室のドアが静かに閉まる
レオは鎮静の効果もあり、力なく横たわっている。
時計を見る。
13:05
御影
それでは、始めます。
深く息を吸った。
この処置を担当するのは自分だ。
院長は隣町への往診に出ており、この場にはいない。
判断も責任も、すべて自分が負う。
御影
(大丈夫、今まで何度も見て、経験してきた。今の僕でも十分できる。)
小鳥遊
鎮静、安定してます
頭の中で、手順を整理する
焦りは禁物、丁寧に、丁寧に、
小鳥遊
心拍、呼吸どちらも安定しています
御影
了解
視線をレオへと戻す。
額には汗がにじんできている。室温のせいではなく、集中しているといつもこうなる。
その時だった
カァン

先ほどよりもはっきりと
僕はこの音が自分しか聞こえていないことを知っている。
今、レオの命のは危険な淵ある。

でも、
御影
(まだ間に合う...)
小鳥遊
先生?
ゆっくり息を吐き、落ち着きを取り戻す。
御影
大丈夫、です
その一言を自分にも言い聞かせる。
絶対助ける
時計の針だけが静かに進んでいく。
処置室に言葉はほとんどない。必要な報告だけがたんたんとやり取りされる。
小鳥遊
数値変化ありません
御影
了解です
丁寧に丁寧に
急ぐのと、焦るのは全く違う。
院長の言葉を思い出す。
丁寧なのが一番早い、と
ーー数分後
レオの苦しそうにこわばっていた体から力が抜けていく
もう鐘の音は聞こえない。
御影
ふーーぅ
僕は、レオの頭に手をおき
御影
よく頑張ったな
といった。
時計を見る
13:43
無事、手術は成功した。
処置から数十分後

レオは静かに入院ケージの中で眠っていた。
呼吸は穏やかで、苦しそうな表情はもうない。
御影はカルテを閉じると、待合室へ向かった
椅子に座っていた男性は、僕の姿を見つけるとすぐに立ち上がる。
レオの飼い主
先生、レオは...?
僕は小さくうなずき、小さく微笑み
御影
処置は無事に終わりました。
レオの飼い主
本当ですか...!
御影
はい、ただ、閉塞は解除できましたが傷口が残ってしまっているので
エリザベスカラーをしっかり着用させてください。
それと、レオ君は相当危ない状態にありました。
頑張ったレオ君をしっかりおうちでねぎらってあげてください。
飼い主さんは唇をかみしめる
レオの飼い主
もっと早く連れてきていれば...
御影
そう思う気持ちはよくわかります。
穏やかに続ける
御影
ですが、今日ここへ連れてきてくださいました。その判断がレオ君を救ったんです。
飼い主さんは、目を潤ませながら何度もうなずく。
レオの飼い主
ありがとうございます...
御影
今夜は入院して、尿がきちんと出るかなどの体調の変化を確認します。
状態が良ければ数日後にはすぐ帰ると思いますよ
御影
再発しやすい病気なので、退院後はトイレの環境や、食事の管理などをして、
しっかり予防していきましょう。
レオの飼い主
はい、分かりました。
先生、本当にありがとうございます。
僕は優しく微笑んだ
御影
一人で頑張る必要はありません。何か気になることがあれば相談してください
飼い主さんは深く頭を下げてもう一度礼を言った
僕もつられて、軽く頭を下げた
御影
レオ君はよく頑張りました。あとは僕たちがしっかり見守るので、安心してください。
飼い主さんはレオ君のいる手術室に目をやると
レオの飼い主
また明日迎えに来るからな、
といった
もうそこには鐘の音は聞こえない。
聞こえるのは静かな呼吸とそこに命がある確かの保証だけだった。
14:30
御影
あ、そういえば僕のカップラーメン...
昼食を食べていない僕は空腹感に襲われ、足早に休憩室へと向かうのだった。

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