第6話

5 現れる
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2026/05/06 00:53 更新


その夜。

眠れなかった。

ベッドに入っても、目を閉じても、
あの顔が浮かぶ。

――ウォニョン。

似ていた。
 
信じられないくらい。
 
でも違う。
分かっている。


分かっているのに。

あなた
……会いたい
ぽつりと零れた言葉に、自分で驚く。 

でも会いたいのは、あの人じゃない。
 
もっと前から、ずっと。
 
会いたくて、会えなくて、
諦めたはずの人。
 
そのとき。
 
部屋の空気が、ふっと揺れた。

カーテンがわずかに動く。
 
窓は閉まっているのに。
あなた
……?
ゆっくり体を起こす。

心臓が妙に騒がしい。
 
部屋の隅に、影があった。
 
最初はただの暗がりだと思った。
 
でも。
 
その影は、少しずつ形を持ち始める。
 
輪郭ができる。
色がつく。
光が宿る。


そして――
 
そこに、立っていた。
懐かしい姿で。
あなた
……ゆじな
声が震える。
 
夢じゃない。
 
目も覚めている。

でも、現実とも思えない。
 
んアンユジンが、そこにいた。
 
あの日のままの姿で。
優しい目で。
少し困ったような笑顔で。

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……久しぶり
声が聞こえた。

はっきりと。

耳元じゃない。

頭の中でもない。

確かに、そこから。

涙が一気に溢れる。
あなた
……どうしてっ、

声が震える。
あなた
どうしてっ、今さらっ……

ユジンは少しだけ目を伏せた。
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……ごめんね。

その言葉が、胸に刺さる。
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ずっと、いたんだよ
あなた
……え?
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そばに…

信じられない。
でも、否定もできない。

だって。
 
何度も感じていたから。
 
気配。
声。
風。
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……見えなかっただけ。

ユジンはゆっくり近づいてくる。

一歩。
 
また一歩。

怖くない。
 
むしろ、懐かしい。

泣きながら笑ってしまう。
あなた
……会いたかった、ずっと

やっと、言えた。
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私も

ユジンが微笑む。

距離は、もう手を伸ばせば届くくらい。
 
思わず腕を伸ばす。
 
触れたい。
 
確かめたい。
 
本当にいるのか。
 


指先が、ユジンの頬に触れる――
 























はずだった。
 
すり抜けた。
 
空気を掴む。
 
何もない。
あなた
……えっ
もう一度、触れようとする。

でも同じ。
 
触れられない。
 
そこにいるのに。
目の前にいるのに。

絶対に届かない。
あなた
……触れないの、?

声が震える。

ユジンは、少しだけ寂しそうに笑った。
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うん……

優しい声。
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ごめんね

胸が潰れそうになる。
あなた
っ……やだっ、

涙が止まらない。
あなた
やだっ、やだよっ……、

もう一度失うみたいで。

もう一度、遠くに行かれるみたいで。

あなた
……消えないでっ。

必死に手を伸ばす。
あなた
お願いっ、ゆじなっ…行かないでっ……!

ユジンは何も言わず、
ただ静かに私を見ていた。

そして。
 
そっと手を伸ばす。
 
重なるはずのない手。
 
でも。
 
不思議なことに、温かい感覚がした。
 
直接触れてはいないのに。 
確かにそこにあるみたいに。
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……大丈夫

また、優しく言う。
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消えないよ、
あなた
……ほんとっ、なの?
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うん、きっと

あの日と、同じ声。
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ずっとそばに居る

涙が溢れる。
あなた
……なんでっ、今になってっ……

ユジンは少し考えるように目を細めた。
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たぶん

静かな声。
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君が、前に進もうとしてるから

心臓が跳ねる。
 
チェウォンの顔が浮かぶ。
ウォニョンの顔も。
あなた
……嫌、

反射的に言ってしまった。
あなた
進みたくない

ユジンが悲しそうに笑う。
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ダメだよ
あなた
なんでっ……
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幸せになって欲しいから

あの日と同じ言葉。

胸が締め付けられる。
あなた
……ユジナがいい

子供みたいな声が出た。
あなた
ユジナじゃなきゃ嫌

ユジンは目を見開き、
それからゆっくり微笑んだ。
 
泣きそうな顔で。
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……嬉しい

かすれる声
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でも

首を横に振る。
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私はもう、隣にいられない

その言葉が、刃みたいに突き刺さる。
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だから

優しく言う。
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ちゃんと生きて

涙が止まらない。
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ちゃんと笑って

声が震える
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ちゃんと誰かを好きになって

――無理だよ。

言葉にならない。
 
嗚咽だけが漏れる。
 
ユジンは、ただ静かに見守っていた。
 
まるで、最後の時間を大事にするみたいに。
 
窓の外では、夜が深くなっていく。
 
触れられない。
抱きしめられない。
キスもできない。

でも確かに、そこにいる。
 
愛していた人が。
 
失ったはずの人が。
 
そして私は気づいてしまった。
 





この再会が――
救いなのか、呪いなのか分からないことに


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